「米国に従属するな」「立ち上がれ日本人」 来日したマレーシア元首相が“日本経済の復権”に大きく期待するワケ【連載】方法としてのアジアンモビリティ(12)
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マレーシア元首相の警句

こうしたなかで、アジアにおける日本の主体的な役割を強く期待してきたのが、親日家として知られるマレーシアの
「マハティール元首相」
だ。同氏が生まれたのは1925年7月10日。間もなく99歳になるが、
「アジアの賢人」
としての明快な主張のさえは衰えていない。1981年に第4代マレーシア首相に就任し、2003年まで22年間の長期政権を全うした。2018年に首相に返り咲き、2020年まで務めた。
1981年に首相に就いたマハティール氏は旧宗主国・英国との関係を相対化し、アジア諸国・イスラム諸国重視の外交に転換。
「ルックイースト(日本に学べ)政策」
を打ち出し、日本の労働倫理や経営手法を導入しようとした。
日本の技術協力による近代化を推進したマハティール政権は、1983年には三菱自動車と三菱商事の出資を得て、国産自動車メーカー「プロトン」を設立、1985年に三菱自動車の「ミラージュ」をベースに、国産車第1号の生産を開始。
しかし、2003年にマハティール氏が退陣すると、三菱自動車と三菱商事は資本提携を解消、2017年には吉利汽車の親会社である浙江吉利控股集団がプロトン株の49.9%を取得している。
マハティール氏は、日本が自信を取り戻し、アジアにおいて積極的な役割を果たすことを期待しているが、日本が米国に追随して中国と対立することを望んでいるわけではない。米中の間で中立的な立場を堅持するのが、マハティール氏の基本政策だ。
中国に対するASEANの認識もいま急激に変化しつつある。ASEANが米国と中国の選択を迫られた場合、いずれを取るかについて、シンガポールのシンクタンク、ISEASユソフ・イシャク研究所が調査したところ、2023年には米国を選択する人が61.1%、中国を選択する人が38.9%だったが、2024年4月には、中国を選択する人が50.5%、米国を選択する人が49.5%となり、逆転した。マレーシア、インドネシア、ラオスでは、
「中国を選択する人」
の割合は7割を超えている。