「もはや鉄道ファンしか乗ってない」 廃線危機の留萌本線、沿線自治体が打ち出した最後の抵抗とは

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JR北海道の留萌本線の廃止が議論されている理由とは。地元自治体でも反対の声が少ない一方、部分存続を模索する自治体もある。

半数を超える廃線容認

深川市、秩父別町、沼田町、留萌市の位置関係(画像:(C)Google)
深川市、秩父別町、沼田町、留萌市の位置関係(画像:(C)Google)

 2016年は部分廃止で乗客が多少増えたものの、100円の営業収入を得るのに必要な費用を示す営業係数は987だった。翌2017年にはブームも終わり、同値は1970に上昇した。留萌~深川間の運賃は1070円だが、赤字を埋めるためには2万1079円にしなければならない計算である(『北海道新聞』2018年11月16日付朝刊)。

 JR北海道が公表している最新(2020年)データによれば、2019年度の営業収益は500万円で、営業費用は13億8000万円となっている。その数、なんと収益の276倍。膨大な赤字路線なのだ。

 留萌市の市民団体「留萌本線にまだ乗り隊?」が2020年9月に発表したアンケートの結果によると、廃線容認は

・56.5%

と半数を超えている。

 JR北海道が最初に全面廃止を提案したのは2016年で、肝心の留萌市はすぐに賛意を示している。ところが沿線自治体には温度差があった。深川~恵比島間の沿線自治体である沼田町や秩父別町では一部存続を求めたのだ。

 そもそも、なぜ留萌市は賛意を示したのか。それは存続した場合、留萌市をはじめとする沿線自治体が年間6億円もの負担を強いられるからだ。対して、沼田町・深川市ではいまだ通学利用者が多く、バス転換は利便性を下げるとしてには難色を示している。廃止か存続か――立場が真っ二つに分かれた結果、沿線自治体も対立している。

 JR北海道は2020年10月に開催された「JR留萌本線沿線自治体会議」の席上で、全線を廃止したいという意志を依然と示した。このことで沿線自治体の対立も深刻になり、2021年2月には、会議の議長を務めていた留萌市が協議から離れてしまった。

 それまで、沿線自治体では共同で一部存続を前提にJR北海道と協議をする方針を固めていた。留萌市はその合意を撤回し、

「留萌市の区間は廃止して構わないので、一部存続協議にも関わらない」

という態度を表明したのである。

 その後、2021年10月には深川、秩父別、沼田の1市2町が協議を実施。この席では改めて部分存続を求めることが再確認されている。

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