電動車2650台以上提供! 「トヨタ」はなぜ、パリ五輪参加にこれほど労力を注ぐのか
トヨタがパリ五輪に巨額投資する理由は、欧州市場でのイメージ向上と販売拡大だけでない。東京五輪の挫折を経て、パリでのリベンジも狙うトヨタは、EUの政策変化にも迅速に対応し、市場競争力を強化する見込みだ。
政治的リスクとの闘い

台数だけ見ても、トヨタが巨額の予算を投入していることは明らかだが、五輪の公式パートナー契約金は数年間で数百億円ともいわれている。では、なぜトヨタはこれほどの資金と労力を投じて五輪に参加するのか。
先ほど、大きな効果が期待できると述べた。人口約5億人という巨大市場である欧州で、消費者のイメージを向上させることができれば、販売台数を伸ばすことができる。しかし、メリットはそれだけにとどまらない。行政の政策の方向性を改善することもできるのだ。
国際貿易には常に政治的リスクがともなう。欧州連合(EU)では、安価な中国製EVの流入による警戒感が高まっている。欧州にとって日本車もアウトサイダーである。
欧州は近年、EV開発に力を入れてきた。気候変動対策という理由もあるが、EUが自国産業の保護・振興のために一石を投じる狙いがあるとの見方もある。つまり、EUの行政関係者や自動車産業関係者が、
「法規制や補助金政策などで既存の内燃機関に強い日本車を市場から退場させれば、欧州EVメーカーのシェアを伸ばすことができる」
と考えてもおかしくはない。
トヨタはEV開発だけでなく、ハイブリッド車にも引き続き力を入れている。さらに、ポルトガルのカエターノ・バスと提携し、欧州バス市場に参入した。内燃機関を得意とするメーカーとして、全方位で攻める方針を打ち出している。このトヨタの戦略が欧州の政策と合致しなければ、努力は水の泡になりかねないのである。