率直に問う 救急車「有料化」は、本当に“不適切利用”を撲滅できるのか?
救急車の有料化について議論が進んでおり、医療の質と効率をいかに向上させるかが今後の課題とされている。また、緊急度評価の向上やACPの普及も重要視されており、医療システム全体の改革が求められている。
救急隊員の疲弊とその現実

元気なうちにACPを持つことを提案しても、家族も患者本人も前向きな反応は期待できないし、広く採用されるには課題も多い。しかし、行政からの要請があれば、ACPの話し合いを持ちたいかどうかという選択肢を提示する機会にはなり得る。他の課題と対応策についても、
・病院間の救急車を利用した患者輸送
・独居高齢者の頻回利用
・精神や知的障害者を関連する機関へつなぐ役割
・♯7117(救急安心センター事業)や適正利用の広報活動
など複合的である。問題を定義し、解決策を見いだすための「緊急度判定の責任に国民的な議論」は、物語の一側面にすぎない。
そのため、有料化の議論も含め、医療・介護・福祉の入り口から出口までの対策を積み重ね、予防医療や適正利用の周知を図ることで、救急需要の抑制策を講じることは理にかなっている。
一方で、救急需要のひっ迫に現場は疲弊しつつある。救急隊員から聞いた話だが、仮眠もとれないまま朝まで働き、残業して報告書を書いている。これが現状である。
以上は、医療DXの活用による問題解決の糸口にはなるかもしれないが、過剰搬送事例の根本的解決にはつながらない。医師の働き方改革も必要だが、救急隊員の働き方改革の必要性を、政治家を含め皆で考える時期に来ているのではないか。あの名セリフを借りれば、
「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」
なのである。