率直に問う 救急車「有料化」は、本当に“不適切利用”を撲滅できるのか?

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救急車の有料化について議論が進んでおり、医療の質と効率をいかに向上させるかが今後の課題とされている。また、緊急度評価の向上やACPの普及も重要視されており、医療システム全体の改革が求められている。

救急業務の複雑な判断プロセス

119番通報時の対応比較表(画像:消防庁)
119番通報時の対応比較表(画像:消防庁)

 前述の報告書には次のように紹介されている。

「「救急業務」の該当性は、消防法体系や緊急度判定プロトコルを指針として、最終的には通信指令員や救急隊員が事案ごとの判断を行っている。しかし、これまでに訴訟が提起された事例もあり、(略)医師、行政官までも含めた法的な保護・免責の必要性等について意見があった」

画像は、通報を受けて通信指令員ーが「不出動・不搬送」という判断をしないことを示している。

 例えば、泥酔して歩けないという緊急通報の場合でも、救急隊員は現場の状況を確認し、医療機関と相談し、搬送対象者を多面的に判断する必要がある。医療機関も、ただの泥酔者を受け入れることに戸惑い、重篤な状態の患者を受け入れたがる。そのため搬送先を探すのに時間がかかり、悪循環に陥る。

 しかし、救急出動せず、電話だけで判断し、重症化した場合、その可能性を否定することはできない。報告書でも、アンダートリアージ(後で重症化すること)を完全に防ぐことは難しいという結論で、途方に暮れている感がある。

 例えば、米国では「良きサマリア人病法」が制定され、法制度上一定の免責が認められているが、日本でも報告書で「免責」について触れられているところに、議論の気配が感じられる。懸念点として

・救助行為の質の低下
・救助者の過剰保護

などがある。懸念を含む緊急事態の判断枠組みや救急車の有料化については、政治・行政・関係者の議論が必要である。しかし、その前にできることをやることに異論はないはずだ。

 例えば、前述のACPは、終末期の意思決定が困難であることを踏まえ、年齢や病期にかかわらず、成人患者の価値観、人生の目標、将来の医療に関する希望を理解し、共有するプロセスとされている。

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