率直に問う 救急車「有料化」は、本当に“不適切利用”を撲滅できるのか?

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救急車の有料化について議論が進んでおり、医療の質と効率をいかに向上させるかが今後の課題とされている。また、緊急度評価の向上やACPの普及も重要視されており、医療システム全体の改革が求められている。

救急車の有料化の実効性

台湾台北市の救急出動件数(画像:海外消防情報センター P52)
台湾台北市の救急出動件数(画像:海外消防情報センター P52)

「救急車の適正利用」を訴えるポスターが商業施設に掲示され、救急需要のひっ迫と救急車の適正利用促進が不可避であることは、もはや世間の常識である。救急車のひっ迫は、

「有料化」

の議論を生む。高齢者や障がい者などへの支援に携わってきた筆者(伊波幸人、乗り物ライター)は以前、当媒体に「救急車はもはや“有料化”すべき? 出動件数「過去最高」というハードな現実、賛否渦巻くワケとは」(2024年1月12日配信)という記事を寄稿し、救急需要の現状と課題、有料化の是非についてリポートした。有料化の賛否や不適切利用を抑制する効果の有無については当記事を参照してもらいたい。

 その後、注目すべき進展があった。三重県松阪市では2024年6月から、市内の三つの中核病院を対象に、救急車で運ばれたが入院の必要がなかった一部の患者から7700円の「選定療養費」を徴収するとしたのだ。

 しかし、救急車の有料化の“効果”には疑問がある。実際、松阪市の搬送件数は1106件から1648件の間で推移しており、目に見えて減少していない。ただ、実際に救急車の有料化を行っていないため、これは“疑似実験”であることに注意する必要がある。

 画像の台北市も、2012年から不適切な救急車利用に対して2000円から6000円を徴収する制度を実施している。有料化以降、救急車の搬送件数は微増傾向にあり、検証する必要がある。つまり、1万円までの有料化では短期的な効果が少ない可能性があり、多面的なアプローチが重要というわけだ。

 従って、後述する「医療の出口問題」を含め、医療制度全体のボトルネックを検討・議論することが重要なのだ。

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