前年比30%増! 「自転車盗難事件」が急増している2つの理由 しかも、鍵をかけたほうが戻ってこない逆転現実
防犯意識の低下と治安改善の関係性
背景のひとつ目は、
「コロナ禍における人流の変化」
だ。多くの報道では、行動制限緩和で人の動きが活発化したこととの関連に触れている。自転車盗難の件数は2020年から2021年にかけては減少傾向にあった。これが、2022年になり再び増加に転じている。この背景には、新型コロナウイルスの行動制限の緩和により、街頭の人流が回復したことが要因とされている。
ただ、人流の回復だけでは説明が不十分である。真に問題なのはふたつ目の背景、
「防犯意識の低下」
である。過去20年余りと比べると、犯罪は大幅に減少している。警察庁の統計によれば、2002(平成14)年の自転車盗は全国で51万120件に上る。犯罪件数全体も2002年には285万3739件、検挙人員は34万7558人、検挙率は20.8%だった。それが2023年には70万3351件、13万860人、38.3%となっている。犯罪件数は大幅に減少し、犯罪者の検挙率も増加している。総じて平和な世の中になったといえるだろう。この治安の改善が、油断を招き、施錠などの防犯意識の低下につながっていることがうかがえる。
では、自転車の盗難を避けるには、どのような方法が望ましいのか。前述のとおり、自転車から離れる際の施錠は必須だ。警視庁は、最低でも「ツーロック」を推奨している。鍵の種類も重要だ。警視庁によれば、自転車の鍵はプレスキー、シリンダーキー、ディンプルキーの順に防犯性能が高くなるという。
鍵のひとつはこれらでも構わないが、もうひとつにはU字ロックやワイヤーロックを用いることで、防犯性能は高まる。ただ漫然と鍵をかけるのではなく、構造物にロックする「地球ロック」を心がけたい。もちろん、これらの鍵で十分に防犯対策をしたつもりでも、ワイヤーを切断されて自転車が盗まれる事例は後を絶たない。
大切なのは、いかに犯人に「この自転車を盗むのは困難だ」という印象を持たせるかだ。そこで最近注目されているのが、自転車を狙う犯人の心理につけ込む「仕掛学」の活用だ。2023年、愛知県警は2023年1~3月にかけて、無施錠の自転車に「盗難防止検証中」と書かれたタグを1200枚以上取り付ける実験を行った。その結果、2022年10~12月と比べて盗難が約8割減ったという。この結果を受けて、全国の警察でも同様の施策が始まっている。
自転車を狙う犯人の手口や心理を知り、それを上回る対策を打つ。利用者自身がそんな当事者意識を持つことが重要だ。タグを用いなくても、見た目の頑丈な鍵を使うなど、犯人の意識に揺さぶりをかけることで、自転車の盗難を防ぐことができるだろう。
今回の資料で示された警察の取り組みは、大いに参考になるはずだ。いずれにしても、基本は自転車から離れる時の施錠だ。