京都市の「高級ホテル」開業ラッシュは“人口減少”のカウントダウンか? 役所は関係否定も、止まらぬ観光公害&地価高騰で今後どうなる
京都市内で高級ホテルの開業が続いている。観光公害の悪化が懸念されるだけでなく、中心部ではオフィスやマンションが不足し、生活や経済活動への影響が心配される。
オフィス、マンション確保へ高さ制限緩和

もうひとつ問題が浮上している。市中心部でマンションやオフィスの適地が限られ、地価が高騰していることだ。国土交通省の公示価格は市の平均価格で2022年までの10年間に66%上昇し、全国平均の38%を大きく上回った。市中心部で新たに建つマンションは「億ション」が珍しくない。
滋賀県大津市のマンションモデルルームには、京都市からの来場者が相次いでいる。西京区の30代女性は
「夫の職場がある下京区がよかったが、価格が高すぎる。大津市なら価格も手ごろで、京都駅まで電車1本で行ける」
と物件を気に入った様子。
京都市の推計人口は5月1日現在で約144万人。2019年までおおむね146~147万人で推移し、その後2020年と2021年に減少数が全国の市町村で最多となるなど、減少幅が広がった。
市民の間でホテル開業ラッシュを人口減少の原因に挙げる声もあるが、市人口戦略室は2010年から2022年までの推計人口増減率でホテル開業が相次いだ中京区、下京区など市中心部の人口が増えていることを挙げ、
「ホテルが人口減少の原因とは考えにくい」
と相関関係を否定した。
しかし、職住近接を目指し、人口流出が進む北区や西京区など周辺部から市中心部へ向かう人の流れの受け皿が足りないのは事実。さらに、大型オフィスビルの供給は長く停滞していた。このため、市は2023年、オフィスやマンション確保に向け、山科区やJR京都駅以南など周辺部で建物の高さ規制、容積率を緩和した。
ホテルの開業ラッシュは市を世界的な人気観光地として定着させた。観光産業は市内総生産の10%程度を占める主要産業になっているが、今後は増え続ける訪日客対策を講じながら、人口流出に歯止めを掛けなければならない。市は難しいかじ取りを迫られている。