てんかん発作の「交通事故」後絶たず! 過去には児童6人死亡の大事故、個人モラルに依存した制度設計はもはや限界だ

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道路交通法では、運転に支障をきたす状態での運転は禁止されているため、免許更新の際には「てんかん」を含む特定の病気を患っていることを申告することが義務づけられている。しかし、この制度には問題がある。

交通弱者支援の課題

自動車事故のイメージ(画像:写真AC)
自動車事故のイメージ(画像:写真AC)

 2023年11月、福岡市の東南東に接する宇美町で派遣社員の男性が運転中にてんかん発作を起こし、高校生ら9人をはねる交通事故を起こしたとして逮捕された。この事件は、男性が運転免許更新時のアンケートに“虚偽記載”をしていたことが報じられ、大きな話題となった。

 道路交通法では、運転に支障をきたす状態での運転は禁止されているため、免許更新時に「てんかん」を含む特定の病気に罹患していることを申告することが義務付けられている。しかし、この制度には問題がある。

“交通弱者”への支援にこれまで携わってきた筆者(伊波幸人、自動車ライター)はてんかん後の運転経験に関わった経験がある。ただ、退院後の彼らに運転禁止を助言しても、それを確認する術はなく、個人の判断を信じるしかなかった。かかりつけ医が問診しても、患者が「運転はしていない」といえば、あっさり見過ごされてしまう。

 一方、適切な評価制度によって運転に支障がないと判断された「一定の病気」の患者を差別してはならず、制度への理解を深める必要がある。

 そこで本稿では、本制度の成り立ちと問題点を解説し、事故再発防止に向けた制度のあり方を再考する。

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