北陸新幹線「敦賀延伸」 総事業費1.7兆円の代償とは? 「早く着く = 良い」ってビジネスマンの発想ですよね
モビリティの新しい世界へ、楽しく乗り出そう――。いつものニュースにはもう飽きた。だからこそ、本連載では新たなモビリティへの案内を始めたい。ゆるくても、本気。非専門ライターが描く、ユニークな目線と世界がここにある。
お金をかけて減った「旅情」

東京から電車で一定以上の距離を移動すると、着いた先の「空気」が明らかに変わる。温度や湿度といった物理的な変化もあるだろうが、
「なんかゆったり流れている気がする」
「匂いが違う」
「深呼吸したくなる」
といった心理的な部分のほうが大きい。この空気の違いや心境の変化こそ、「旅情」と呼ばれるものの正体だろう。
いったい何時間かけるとこうした違いを感じるのかはよくわからないが、移動時間が長ければ長いほど、「空気の違い」を明白に感じるし、非日常の度合いが増す。1時間離れれば1時間分、3時間かければ3時間分だけ空気の変化を味わえる。観光客は、お金と時間をかけて「空気の変化」を買っているようなものだ。
いい換えれば、東京から2時間50分で行けるようになった福井の空気は、かつての3時間以上かけてようやく到着できた福井とは、もはや同じではない。30分早く着けるようになった代償として、福井の空気はほんの少しだけ東京の空気に似てしまうだろう。
ちなみに東京~大阪間でいえば、1950(昭和25)年に特急「つばめ」で8時間かかっていたのが、東海道新幹線開業翌年の1965年には3時間10分で結ばれるようになった。こういう新幹線なら、何も文句はない。移動時間が6割減になったのだから、さすが“夢の超特急”である。
かたや、敦賀延伸は構想から50年以上の歳月と1兆7000億円をかけ、短縮できたのは
「たったの30分」
しかも、時間的にも費用的にもパフォーマンスは飛行機と同じ。お祭りムードに水を差すようで申し訳ないが、税金の無駄遣いとしかいいようがなさそうである。