「今だけ、金だけ、自分だけ」 バブル崩壊以降の欧米型「成果主義」を克服し、日本のお家芸“人材育成”を取り戻せ
近年、「人的資本経営」が注目されているが、日本では長らく「企業は人なり」が信条だった。今こそ、日本が得意としてきた人材育成を重視する伝統を「取り戻す」チャンスだ。
企業も個人も「今だけ」化

それは個人の側でも同じだ。能力開発を行うことは、「できないことに取り組む」ということであり、結果的に低いアウトプットにしかならない可能性がある。そうなると、成果主義では低い評価になってしまう。
そのため、新たな能力開発よりも
「今できることに集中して取り組む」
というインセンティブが働くようになった。しかし、同じことばかりやっていても能力は向上しない。
そして今、時代に合わせて「リスキリング」と声高にいわなければならない状況にあるが、これは至極当然のことである。バブル崩壊とともに、企業も個人も「今だけ」になり、人材育成の軽視が長く続いた。
人材育成を「コスト」に変えたもの
これに追い打ちをかけていたのが「株主資本主義」である。
バブル後に日本企業の特徴であった企業同士の株の持ち合いが徐々に解消されたことと、外国資本の日本企業への投資が活発化したことによって、
「会社は株主のものである」
という価値観がこれまたはやった。
もちろん株主はお金を出している立場であり重視すべき存在だが、とは言え上場企業における株主とはデー・トレーダーなどに代表されるように、会社の将来に特にコミットすることもなく、株価の乱高下に合わせて鞘(さや)抜きを目的に株を保有するだけの人々も多い。
そういう株主に合わせると、長期における継続的な企業成長などどうでもよくなり、経営者は四半期ごとの決算開示が自分の任期中にのみ良好であればよいという経営をするようになった。そうなると、人材育成を中心とする人的資本経営は
「コスト」
でしかなくなってしまった。