なんと500社以上! なぜ中国には「EVメーカー」がやたらと多いのか

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中国では現在、500社以上のメーカーがEVを生産している。実際、中国のEV情報サイトを見ていると、日本ではまったく知られていないメーカーが数多く見つかる。

ローエンド市場の地方企業台頭

2024年1月23日発表。主要メーカーの電気自動車(BEV/PHV/FCV)販売台数推移(画像:マークラインズ)
2024年1月23日発表。主要メーカーの電気自動車(BEV/PHV/FCV)販売台数推移(画像:マークラインズ)

 このような背景から、各社は価格帯や購買層を絞ることで、市場シェアを確立しようと動き出している。BYDの存在感が最も高いミドルエンド市場では突出しているが、ハイエンドやローエンド市場ではユニークな動きが見られる。

 ハイエンド市場での地位確立を目指す企業のひとつに、上海蔚来汽車がある。自動車情報サイト「易車」を背景に2014年に設立された同社は、当初からハイエンド市場に向けたモデルを開発してきた新興メーカーだ。2023年末に発表された2025年納車予定のフラッグシップモデル「ET9」の価格は80万元(約1600万円)で、テスラの「モデルS」や「モデルX」よりも高価だ。

 同社は当初から40万元以上の高級車を主力としており、アフターサービスの充実も特徴のひとつだ。同社は現在、専用のバッテリー交換ステーションを設置中で、顧客が交換ステーションの前に車を止め、充電ボタンを押すと、車両が自動的に交換ステーションに入って交換を完了する。追加料金を払えば、メンテナンスや洗車などのサービスも充実しており、それ自体が所有者としてのステータスを生み出すことに成功している。

 最も動きが活発なのは、ローエンド市場である。これまでローエンドといえば10万元(約200万円)以下のモデルを指していたが、いまや価格破壊はさらに進んでいる。

 この市場で最も有名なモデルは、中国大手自動車メーカーの上海汽車集団と米ゼネラルモーターズ(GM)の合弁会社である上汽通用五菱汽車が2020年7月末に発売した小型EV「宏光MINI」である。このモデルは2万8800元(約60万円)からという超低価格で販売され、一時は月間5万台近くを販売する活況を呈した。

 上汽通用五菱汽はもともと中国広西チワン族自治区柳州市に本社を置くローカル企業である。宏光MINIのように、ローエンド市場にポジショニングを置く企業の多くは、地方に拠点を置き、地方の消費者をターゲットにしている。

 宏光MINIの成功を見て、市場に参入する企業が増えている。その結果、宏光MINIは失速している。2019年に設立され、江蘇省徐州市に拠点を置く凌宝汽車の凌宝COCOは、宏光MINIよりも安い2万6800元(約55万円)で販売されている。

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