EV普及に立ちふさがる「電池切れ」の壁 その後の“けん引”でも課題山積、JAFも対応に大苦労か
ドイツで被害年間20万件も

「猫バンバン」に代表されるように、自動車のエンジンルームに小動物が入り込むのは日常的に経験するトラブルだろう。何を隠そう、筆者(ネルソン三浦、フリーライター)も、出かけようとエンジンをかけたときに猫の鳴き声に気づいたことがある。すると、エンジンルームから5匹の子猫が出てきたのには驚いた。実は、自動車のエンジンルームに入ってくるのは猫だけではない。ドイツでは、“テン”による自動車のケーブル損傷トラブルがかなりの頻度で発生しているのだ。
ドイツ保険協会(GDV)の報告によると、テンによるトラブルが毎年20万件以上発生しており、被害額に換算すると約9000万ユーロ(約140億円)となるという。
テンはイタチ科の小動物で、イタチより大きくかつハクビシンより小さい。雄で、頭胴長約45cm、尾長約25cm、体重約1.5kgとありそこそこ大きいように思える。国内では、本州、四国、九州、淡路島、対馬、佐渡島のほか、近年では北海道でも分布が広がっているという。
日本では、鉄道の信号ケーブルの損傷トラブルや、屋内配線をかじられたことによる火災が時折報道されていて、ネズミなど小動物が犯人とされている。ニュースとなるような大きな事故とはならないものの、実は自動車についてもかなりの数の被害が発生しているのかもしれない。
実のところ、テンはガソリン車、電気自動車(EV)どちらにも被害を及ぼしているが、ただEVの場合、修理費が高額になる傾向があると、GDVは注意喚起している。車種やかじられたケーブルの種類によっては、修理不可となる場合や修理費が数十万円にのぼる場合もあるという。
テンにとっては、今からかじろうとするケーブルの修理費が安いかどうかわからない(そもそもEVのケーブルかどうかもわかっていないだろう)ので、車両の下部をふさいで入れなくするか、車庫があるならば、なかに入ってこないようにするなどの対策がドイツでは求められている。