EVの普及は「車両」が先か? それとも「充電インフラ」か? 各国悩ます根深いジレンマ、改めてデータから考える
地域別の充電器事情

地域別の充電器事情を見てみよう。
●欧州
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、EU27か国+英国における充電器の配備状況は、ドイツ、英国、オランダ、フランス、スウェーデンの5か国で全体の76%を占めている。
ノルウェーのEV普及率は93%と世界一だが、公共充電器は少ない。一戸建て住宅が多く、各戸にICEブロックヒーター用の200V電源が備わっているため、公共充電器への依存度が低いからだ。それでも、地方では出力が低く、充電に時間がかかると不満を漏らす人が多いという。
オランダのEV普及率は35%と高く、公共充電器1台あたりのEV台数(充電器充足指標)は世界平均を大きく上回っている。背景には、1999年から再生可能電力の供給を開始し、自治体や民間団体が中心となってEV普及を進めてきたことがある。現在、ユトレヒト市は再生可能電力の出力変動を補うため、EVを「街のバッテリー」(V2H。EV/PHVの大容量バッテリーから電力を取り出し、家庭の電力として利用する仕組み)とする取り組みを始めている。
●中国
EV普及率は29%と高いが、充電器充足指標は世界第2位である。一般的に、自動車会社はEVを購入した個人顧客に充電器を贈呈している。一方、タクシーなどの営業車両は公共用の充電器を利用するが、都市ごとに台数が限られているため、需要不足から設備の稼働率は伸び悩み、採算を取るのが容易ではない状況だ。
さらに、ブルームバーグの報道によると、充電器は都市部に集中しており、郊外や農村部にはほとんど配備されておらず、EV普及の障害となっているという。
●米国
EV普及率は8%と低く、充電器充足指標は25台と世界平均を大きく下回っている。ジェトロによると、米国のEV市場は導入期から成長期に移行しており、価格と公共充電器の不足がEV購入の主な障壁となっているという。環境意識の高いコネチカット州が、2035年以降ガソリン車の販売を禁止する「EV推進法案」を撤回した理由は、充電器の不足が背景にある。
米国には5万1000か所の充電ステーション(複数の充電器が設置されている)があるが、カリフォルニア州、ニューヨーク州、フロリダ州、テキサス州、マサチューセッツ州の五つの州がその半数を占めている。ここでも大都市圏に偏在しており、多くの州は充電過疎地帯で、EVが普及していない。