タクシー運転手試験「20言語対応」という愚策 安易な多言語化は「乗客の危険」を招くだけだ
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警察庁は、タクシーやバスなど旅客を輸送する自動車の運転に必要な「第2種運転免許」について、外国語による試験を認めることを決めた。しかし、その拡大は疑問が残る。
多言語社会への適切な対応

多くの国では、外国人労働者にその国の主要言語を話せることを求めるのが一般的である。2022年に労働政策研究・研修機構が発表した報告書「諸外国の外国人労働者受入制度」では、各国の制度について以下のように説明している。
・米国:英語の能力が十分でない移民、難民らに対する成人語学教育を、法律に基づき、各地の教育機関等で実施
・英国:入国後の能力開発については、基本的に想定していないと考えられる。地方自治体が期間限定の資金を得て、外国人向けに英語コースを提供したケースも見られるが、恒久的な制度ではない
・ドイツ:統合講習(ドイツ語、市民教育等)を実施
・フランス:永住を希望する外国人に対して、「共和国統合契約」に基づくフランス語研修及び市民訓練を実施。近年は新規入国者の学歴向上、資格取得、専門的職業経験の習得を強化する方針
一般的に外国人労働者を導入している国の状況は、
・国内で確保できない職種でスキルを持つ者にしか就労許可を与えない
・語学や市民教育などスキルの習得、同化を求める
のいずれかに大別される。外国人材確保のための多言語化と並行して、日本語教育の強化が不可欠である。外国人労働者に適切な日本語教育を提供することは、社会統合に不可欠であり、彼らが日本社会に溶け込むための基礎を築くものである。