タクシー運転手試験「20言語対応」という愚策 安易な多言語化は「乗客の危険」を招くだけだ

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警察庁は、タクシーやバスなど旅客を輸送する自動車の運転に必要な「第2種運転免許」について、外国語による試験を認めることを決めた。しかし、その拡大は疑問が残る。

日本語能力の必要性とその重要性

日本語能力試験の2023年第1回(7月)データ(画像:国際交流基金、日本国際教育支援協会)
日本語能力試験の2023年第1回(7月)データ(画像:国際交流基金、日本国際教育支援協会)

 第2種免許への拡大は疑問が残る。というのも、これまで客を乗せて運転する場合、外国人には極めて厳しい日本語能力が求められてきたからだ。

 例えば、現在日本でタクシー運転手として働いている外国人は、

・2種免許
・日本語能力試験(JLPT)N1レベル
・大学卒業程度の学歴

が必要とされる。JLPTの公式ウェブサイトによると、N1は

「幅広い場面で使われる日本語を理解することができる」

ものとされている。2023年7月の試験では、国内外から14万1392人が応募し、4万975人が認定されている(認定率は34.0%)。

 つまり、これまでは客を乗せて運転する場合、日本語でコミュニケーションが取れることが最低条件だった。そこに多言語対応を導入することは、

「制度の後退」

といえるだろう。

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