電車のつり革「手が届かない」 SNSで女性の不満爆発、ユニバーサルデザインとはかくも難しいものか
東京さくらトラムで感じた違和感

筆者(才田怜、ジェンダー研究家)は先日、東京さくらトラム(都電荒川線)に乗った。1両編成の小さな電車は、東京都下唯一の都電である。三ノ輪橋(荒川区)~早稲田(新宿区)間のたった12.2kmの路線に30もの停留場があり、その小刻みな駅間隔はまるでバスのようだ。
お昼時でガラガラを予想していたが、乗客の多さに驚いた。1日平均約4万7000人(令和4年度)が利用するのだという。
お年寄りが多いと思いながら車内を観察していると、何かが普通の電車と違うと感じる。違和感といってもいい。それは
「つり革」
だった。
いままで目にしたことのないほどベルト部分が長く、つり革が低い位置に下りてきている。低い方のつり革の下辺は、160cmの筆者の目の高さなので、150cm前後になる。これであれば、140cm台の小柄な女性でも届きやすいはずだ。
とはいえ、つり革は低ければいいというものでもない。男性を中心に、背が高い人の顔や頭に当たりやすくなるからだ。
つり革は、ひとつの車両のなかに複数の高さのものが設置されていることが多く、その範囲も電鉄会社によってまちまちだ。
国はガイドラインを設けている。国土交通省の「公共交通機関の旅客施設・車両等・役務の提供に関する移動等円滑化整備ガイドライン(バリアフリー整備ガイドライン)」には、つり革の高さや配置は、
・客室用途
・利用者の身長域(特に低身長者)
に配慮するとある。『日本人の人体計測データ』(人間生活工学研究センター、2003年)の「通勤近郊列車のつり革高さと手すり位置の検討」には
・通路つり革下辺高さは、通路としての要件から180cm以上
・一般つり革の下辺高さは、160~165cm(成人男性に配慮)
・低位つり革下辺高さは、155~160cm(女性・高齢者に配慮)
という参考データが記載されている。