新宿バスタ2倍以上の駐停車スペース! サンフランシスコに突如現れた巨大「バスターミナル」をご存じか【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(18)

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海外にある高速バスターミナルは、その多くがユニークで個性にあふれている。本レポートではその詳細を紹介する。

都市再生の起爆剤

サンフランシスコの道路上に建設された巨大バスターミナル(画像:牧村和彦)
サンフランシスコの道路上に建設された巨大バスターミナル(画像:牧村和彦)

 高速バスを集約したターミナルといえば、どこを思い浮かべるだろうか。“東の横綱”が新宿バスタであれば、“西の横綱”は天神バスターミナル(福岡市)といったところだろうか。

 今後、

・札幌
・品川
・名古屋
・神戸

など全国各地で都市開発と一体となった新たな交通拠点や防災拠点を備えたターミナル計画が日本でめじろ押しであり、交通結節点がますます注目されていくだろう。

 一方で海外に目を移せば、高速バスターミナルには個性あふれるユニークなものが多い。サンフランシスコでは、道路上に突如現れた巨大な都市公園を備えたバスターミナルが新たなまちづくりの起爆剤として話題だ。

 屋上には都市公園、3階に都市高速道路と直結した郊外行きの高速バスターミナル、1階は都市内の路線バスが集約する巨大な拠点が2018年に誕生した。デザインされた外観からは、一見、ここにバスターミナルがあるとは想像できず、以前は自動車が行き交う道路であり、その道路上に立てられたというから驚きだ。

米国サイズのターミナル

バスターミナル上空は都市公園、周りはIT企業が集積(画像:牧村和彦)
バスターミナル上空は都市公園、周りはIT企業が集積(画像:牧村和彦)

 サイズも米国サイズだ。

・横50m
・縦440m

の敷地面積があり、なによりも3階のバース(バスが駐停車するスペース)数だけでも新宿バスタの倍以上の30バースを超え、交通結節点としての十分な機能を備えている。高速道路と直結しているだけではなく、時計回りにバスが巡回できるよう、高速道路からバスターミナルまでのロングランプは、逆走(左側通行)するというアクロバットな運用が行われている。

 効率的にバスがターミナルに出入りできるよう工夫されているだけではなく、短時間に乗降できるよう、停留所はノコギリ型の形状とし、至る所でバスファーストなデザインとなっている点も見逃せない。

 1階は都市内の路線バスが集約する拠点としていることから、都市内から郊外への移動は、このバスターミナルの上下移動だけで完結する。サンフランシスコの都市内路線バスは坂の街ということもあり、電気駆動によるトロリーバスを採用している。

 このターミナルも1階天井部はトロリーバス用に独自に設計されたデザインとなっており、排ガスもなく、とても静かなターミナルであることも特徴だ。地下2階には、空港から直結する鉄道駅ができる予定であり、鉄道が乗り入れた暁には、米国内だけではなく世界の玄関になることは確実だろう。

 さらには、このバスターミナルを取り囲むよう沿道は、世界で活躍するIT企業が集積しており、セールスフォースやスラックなどの本社がある。4階の屋上公園は、隣接する建物から直接渡れるようになっているところもあり、日中などにはさまざまなイベントが行われ、周辺オフィスワーカーの憩いの場として、緑あふれる空間が新たな都市の価値を生んでいる。

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