「商用EV」普及のカギは何か？ 寒冷地「充電問題」とその解決策、メルセデス・ベンツ「eアクトロス」を例に考える

商用EVの周辺機器開発

　ここからは、eアクトロスの経験を踏まえ、日本での商用EVの実用化を想定したい。寒冷地での急速充電時に車両を加熱・保温するのであれば、その都度利用すればいい。問題は、事業所などでの普通充電がメインの場合だ。ルート配送など、1日の走行距離がほぼ決まっている商用EVであれば、充電に余計な時間がかかっても、コストの安さをメインに使われることは想定できる。

　寒冷地での普通充電には大きな問題があることは、以前から指摘されていた。限られた充電電力では、電力の大半がバッテリーの加熱や保温に消費され、肝心のバッテリー自体が充電されないという問題だ。また、一般的に氷点下5度以下の環境では普通充電が難しいことも指摘されている。

　この問題は、自家用EVであれば

「冬場は性能が低下するから他の車両を使えばいい」

で解決できるが、あらゆる面で厳しいコスト管理が課せられている商用EVには、そのような考えは通用しない。商用EVの普及を進めるのであれば、イニシャルコストだけでなく、あらゆる条件下でのランニングコストが重要だ。

　商用EVの普及に当たっては、寒冷地での急速充電の充電時間制限を考慮し、バッテリーの加熱・充電モードを新設。さらに、幅広い使用温度に対応できる普通充電器の開発など、周辺機器の充実も望まれる。