拡大するロシアの「航路」「鉄道網」 制裁下の交通インフラ強化にみる、飽くなき野心と戦略とは

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最近、ロシアの交通網と経済動向に関する話題が日本国内でも頻繁に取り上げられている。特に、2022年10月に石川県の七尾港からロシアのウラジオストクへの新航路開設は、日本とロシア間の新たな経済的・文化的交流の可能性を示唆している。

SWIFT排除も続くロシア貿易

ロシア船籍の船(画像:写真AC)
ロシア船籍の船(画像:写真AC)

 ロシアの2022年の貿易額は前年比8.1%増の8505億ドルに達し、過去最大を記録した。このなかで、輸出は19.9%増の5915億ドル、輸入は11.7%減の2591億ドルであった。結果として、ロシアは3324億ドルの貿易黒字を達成している。

 ロシア経済は、特に原油やガスなどのエネルギー輸出に依存しており、国際資源価格の変動が経済動向に大きな影響を与えている。ウクライナ侵攻後の資源価格の高騰は、ロシア経済に一時的な利益をもたらした。

 しかし、ウクライナを支援する西側諸国は、ロシアからの輸入を減らすことで対抗しており、ロシアは中国やインドなど新たな市場への拡大を図っている。経済制裁中にも関わらずロシアと貿易を行っている国々は、侵攻開始当初の国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除などの強力な制裁にもかかわらず存在している。

 イェール大学の調査によれば、2023年9月時点でロシアにおける外資系企業の約33.7%が撤退を表明し、31.8%が活動を一時停止、34.8%が何らかの形で活動を継続している。このうち13.7%が活動を継続、11.0%が新規投資を停止、9.7%が活動を縮小している。

 国別で見ると、中国企業の79.2%が侵攻後も活動を継続しており、フィンランドは撤退した企業が全体でゼロである。ドイツは17.6%、イタリアは22.6%、日本は17.1%、米国は5.0%と、ロシア国内で経済活動を続けている企業が存在する。

 前述の「ロシアNIS調査月報」2023年8月号の分析によると、2022年の主要貿易相手国は中国が第1位、次いでトルコ、ドイツ。日本は11位、米国は14位に位置している。侵攻後の制裁強化にも関わらず、日露間の貿易は継続している。

 財務省の貿易統計によると、2023年10月の速報値ではロシアからの魚介類9627t、穀物類281t、液化天然ガスや鉄鋼などの資源も輸入されている。

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