アクセル・ブレーキ踏み間違い事故 その原因を「人間のせい」にしている限り、問題は永遠に解決しない
高齢者・若年者の踏み間違い事故報道。高齢者は機能低下、若年者は未熟が原因だエラー防止には工学的対策が必要である。
AT時代の安全

黎明期の車の操作方法は統一されておらず、レバーで加減速を行うもの、ペダルでギアチェンジを行うものなどさまざまな操作が乱立していた。
しかし、車が量産されるようになり、売れる車とそうでない車が出てくるようになると、後発の車の操作方法を売れている車に合わせるようになる。なぜなら、既に多くの人が慣れ親しんだ操作方法にしておけば、
「買い替えのユーザーが買ってくれる確率」
が高まるからだ。こうして車はなかば
「なし崩し的」
に、加速も減速もペダルというエラーを誘発しやすいUIがデファクトスタンダードになってしまった。
ただし、AT車が登場するまでは、加速はアクセルとクラッチの組み合わせ操作であったので、ブレーキと間違えてアクセルを踏んでもエンストする可能性が高く、踏み間違い事故はあまり起きなかった。しかし、ほとんどの車がAT車になってしまった現在、踏み間違い事故は頻発している。最終的に事故を起こしたのがドライバーであることは間違いないのだが、
「社会全体がエラーを誘発する車のUIを放置してしまったこと」
も、踏み間違い事故の背後要因であることは理解しておくべきだろう。
もちろん、今から世界中の車の加減速のUIを全面的に変更するのは現実的ではない。膨大なコストがかかる上に、いくら優れたUIに変えたとしても、そのUIに慣れるまでの間はエラーが起きやすくなるという問題もある。
また、例えば「ナルセペダル」のように、エラーを起こしにくい意欲的なUIの提案もあるのだが、なかなか普及しないところを見ると、異なるUIを社会に受け入れてもらうのは容易ではなさそうだ。