アクセル・ブレーキ踏み間違い事故 その原因を「人間のせい」にしている限り、問題は永遠に解決しない

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高齢者・若年者の踏み間違い事故報道。高齢者は機能低下、若年者は未熟が原因だエラー防止には工学的対策が必要である。

異なる乗り物のUIデザイン

アクセルペダルを踏む足(画像:写真AC)
アクセルペダルを踏む足(画像:写真AC)

 車のハンドルは、「行きたい方向に回す」という直感的なUIである。一方、加減速のUIであるアクセルペダルとブレーキペダルには問題があるようだ。車に対して加速と減速という「逆の挙動」を命令する操作が、ペダルを踏むという

「同じ操作」

になっている。しかもふたつのペダルはすぐ隣にあり、一般的にはどちらも同じ右足で操作する。このような紛らわし操作方法を採用しているのは、数ある乗り物のなかで車だけだ。

 バイクのアクセルは右手グリップの回転によって操作する。ブレーキは両手のレバー、あるいは右手のレバーと右足のペダルの組み合わせである。

 鉄道はマスコンと呼ばれるレバーで加減速を操作する。2ハンドルと1ハンドルのタイプがあるが、2ハンドルタイプでは加速とブレーキが別のレバーに割り当てられており、別の手で操作する。

 レバーを動かす方法も、押さえながら回転させる、縦に引く、横に引くなど、ふたつのレバーが同じ動作にならないように工夫されている。1ハンドルタイプでは1本のレバーで加速と減速を行うが、操作の向きが手前と奥で真逆になっている。

 船にはブレーキがない。もともと水の抵抗が大きいので、スクリューを止めれば自然に減速する。さらに急減速が必要な場合には、加速するのとは別のレバーや機関室への口頭指示によってスクリューを逆回転させて急ブレーキをかける。

 飛行機には、空気抵抗を増やして速度を落とすスポイラー、エンジンの力で速度を落とす装置(逆噴射やプロペラの羽の角度を逆にする仕組み)、そして車輪に取り付けられた車と同じ摩擦式のブレーキと、3種類の減速方法がある。いずれのブレーキも、飛行機を加速させるスロットルとは別のUI(レバーやペダル)や逆の動作(スロットルを加速とは反対方向に動かす)が割り当てられている。

 車以外の乗り物は、加速と減速の操作方法が全く違うので、ブレーキをかけたいのに、操作を間違えて加速することまず考えられない。つまり、

「エラーを誘発しにくいUI」

が採用されているのだ。ではなぜ車はこのように紛らわしいUIが標準的になってしまっただろうか。

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