2年ぶり「鉄道技術展」 語られた二つの「新たな課題」とは? コロナ禍 災害 車内犯罪も多発(前編)

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3日間の日程で開かれた「第7回 鉄道技術展2021」。新型コロナ禍での鉄道利用者数の減少や、自然災害、電車内での犯罪多発など、前回2019年開催から2年をへて業界の新たな課題が見えてきた。

日本の鉄道が直面している大きな変化

会場の様子(川辺謙一撮影)。
会場の様子(川辺謙一撮影)。

 とはいえ会場のにぎわいは、前回と大差ないように筆者は感じた。会期初日の朝には、展示会場の入口に長い行列ができ、併催事業である講演会のほとんどが満席になった。これは、来場者全員が個々に手指のアルコール消毒や検温を行って入場したことや、ソーシャル・ディスタンスを保つために座席を左右1席分ずつ空け、講演会場の座席数を減らしたことが関係していると考えられる。

 前回と今回の「鉄道技術展」のちがいは、展示会場よりも講演会場で見られた。近年日本の鉄道を直撃した影響が、そのまま講演の内容に反映されていたからだ。

 いま日本の鉄道は、これまでになかった大きな変化に直面している。2年前の前回開催時には想定できなかった変化が起きているのだ。

 前回の講演会で語られた課題は、大きく分けて二つあった。一つは、少子高齢化や生産年齢人口の減少によって、鉄道の利用者数や鉄道を支える労働者数が減り、鉄道の維持そのものが難しくなること。もう一つは、欧州を中心に持続可能な社会の実現に向けた取り組みが加速する波や、100年に一度とされるモビリティ革命の波の影響が、日本の鉄道にもおよぶことだ。

 いっぽう今回の講演会では、これらに加えて二つの大きな変化について語られた。一つは、コロナ禍や、それに伴い加速した働き方改革の影響で鉄道利用者数が減少し、多くの鉄道事業者が収入減によって大きな打撃を受けたこと。もう一つは、ゲリラ豪雨などの自然災害による甚大な被害や、電車内での犯罪による乗客の被害が相次ぎ、多くの鉄道事業者が対応に追われたことだ。

 このような1~2年に起きた大きな変化に対して、日本の鉄道技術はどう対応し、どのような方向へ進むべきなのか。今回はそうしたテーマを扱った講演を多く聴くことができた。今後の日本の鉄道の発展について来場者同士が情報交換をし合う上で、今回の「鉄道技術展」は貴重な機会だったと言える。その具体的な内容については後日、別稿で詳述したい。

 なお、次回の「鉄道技術展」は初めて大阪で開催され、西日本の鉄道関係者も参加しやすくなる。会場は大阪市住之江区にある国際展示場(インテック大阪)で、2022年5月25日(水)から27日(金)までの3日間開催される予定だ。

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