ハイオク表示不正から約3年 ガソリン高騰の今こそ「オクタン価」を学べ

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2020年6月、ハイオクガソリンの表示不正が社会全体を騒然とさせた。あれから3年余り。騒動は鎮静化しているように見える。

右肩下がりのガソリン消費量

ガソリンスタンド(画像:写真AC)
ガソリンスタンド(画像:写真AC)

 ちなみに近年の日本国内におけるガソリン消費量は右肩下がりが止まらない。政府統計によれば、2013(平成25)年の自家用登録車の年間ガソリン消費量は5071万6624kLだったのに対して、2018年には4999万901kLに。この数字は自家用登録車を対象としたものだが、営業用登録車もまたほぼ同レベルでの減少だった。

 その後、この傾向は回復することなく、2021年には自家用が4103万5714kL。営業用は4170万9073kLまで減少することとなった。ここでの大幅な減少はコロナ禍の影響が少なくなかった。その結果、コロナ禍が沈静化した2022年にはわずかに増加することとなったが、その減少傾向に歯止めが掛かったとはいえない状況である。

 こうした消費状況であれば、元売り側がコスト削減に方針転換するのはなかば当然だろう。問題だったのは、ハイオクガソリンの製造と流通に大きな変化があったことについて、広報広告を通じての周知徹底を怠ったことだ。加えてこのことが、実際に消費者に何らかの損害を及ぼしたのかということに尽きるだろう。

 しかし、実際のところ市販されていたハイオクガソリンの成分が変わっていたことに起因する深刻な実害が報告された例となると、筆者(矢吹明紀、フリーランスモータージャーナリスト)の耳には聞こえてこなかった。これは運転者の

「何となく性能が落ちた気がする」

といった曖昧な印象報告ではない。

・ガソリンが理由でエンジンが破損した
・実測データで明確に性能が低下した

といった証拠をともなう実害の話である。

 このことは、言い換えれば日本国内で製造され流通しているガソリンの品質の高さを証明した一例といえなくもない。商道徳的には企業としてあるまじき行為であった一方、元々の商品がしっかりしていたため実害が生じるまでには至らなかったということでもある。

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