「海運 = 時間がかかる」はもう古い? 2024年問題で「中距離フェリー」「RORO船」が再注目されるワケ

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2024年問題の対策として、海上輸送への注目は一段と高まっている。物流業界で有効な解決策と目されているのが、デジタル化の推進による効率化と海運や鉄道に輸送手段を移す「モーダルシフト」だ。

RORO船のメリット

九州発着の内航RORO船航路情報(画像:国土交通省)
九州発着の内航RORO船航路情報(画像:国土交通省)

 では、このフェリーと並ぶRORO船のメリットとはなにか。

 RORO船のメリットは、就航が容易なことである。基本はフェリーと同等の構造でコンテナ船に比べて、港の荷役設備が整っていなくとも荷物の積み下ろしができるという利点がある。

 また、旅客を扱わないことも関係している。国土交通省九州運輸局のサイトでは、九州発着の内航RORO船の航路情報を公開しているが、現在でも多くの航路が設定され物流網を担っていることがわかる。

 とりわけ九州でRORO船の発着が多いのは、大分県の大分港だ。フェリーの多くは新門司港へ向かうが、RORO船は大分港が関東向けでは最大の港となっている。大分港からは、高速道路を用いて九州各地への輸送が可能だからだ。

 さらに発展を期待させているのが、

「中九州横断道路の整備本格化」

だ。中九州横断道路とは大分市から熊本市に至る道路である。

 現在、熊本市に隣接する菊陽町では半導体の世界最大手・TSMCの進出を受け半導体産業の集積が進んでいる。将来的には、ここからの物流を中九州横断道を経て大分港のRORO船が担うことが想定されている。

 このため、大分港の大在(おおざい)地区では将来を見据えた港湾の再編が進み、RORO船専用ターミナルの新設工事が行われている。工事が完了すれば、ターミナルにおける荷台(シャシー)の台数は現行の4倍以上の1700台となる予定だ。

 また、静岡県の清水港でもRORO船の活用を利用増の鍵として考え、利用促進の施策が進んでいる。清水港は中部横断自動車道が開通したことで山梨県・長野県からもっとも近い港になっている。

 このように、新たな航路の登場により、物流網そのものの再編・効率化が始まっている。2024年問題を契機に、船を中心とした物流網は強化されているのだ。

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