中国の激安EV「宏光MINI」 販売台数28か月連続1位も、あえなく急失速した4つの致命的理由

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SGMWの宏光MINIは2年4か月にわたって売れに売れ続けた。しかし2022年11月頃からその販売台数に陰りが見え始めた。いったいなぜか。

「販売価格」「補助金」頼みの中国市場

宏光MINI(画像:上汽通用五菱汽車)
宏光MINI(画像:上汽通用五菱汽車)

 2017年頃からEVブームが巻き起こった中国の自動車市場において、中核としてけん引して来たのは富裕層とテスラに代表される外国ブランド車だった。

 しかし、こうした顧客層は中国市場においては少数派である。中国の自動車産業にとって次なる課題だったのは、格安国産EVによる新規ユーザー層の開拓。これを見事に成し遂げたことは、宏光MINIの紛れもない大きな功績だった。

 既述したとおり、宏光MINIは2年4か月にわたって売れに売れ続けた。しかし2022年11月頃からその販売台数に陰りが見え始めることとなる。この傾向は2023年に入ると顕著なものとなり、1月から4月までの総販売台数は

「8万7928台」

だった。

 この数字は対前年同月比で26.5%減という急激なものだった。特に4月の販売台数は約1万8000台に止まった。これは、ピーク時に月間5万台以上を売り上げていたクルマに訪れた失速の瞬間だった。

 ちなみに中国市場におけるEVの販売台数は、

・販売価格
・補助金政策の変更

で大きく動く傾向はあった。しかし、今回の宏光MINIの失速は事実上のひとり負けだった。

 SGMWはこの問題を深刻なものと捉え、翌5月には値引きで対応することとなる。しかし状況が好転したという話は聞こえては来ない。

大ブレーキの背景

宏光MINI(画像:上汽通用五菱汽車)
宏光MINI(画像:上汽通用五菱汽車)

 わが世の春を謳歌(おうか)していた宏光MINIに訪れたこの大ブレーキの背景には何があったのか。

 わかりやすく検証してみると、次のような理由が挙げられる。

1.発売から2年以上が過ぎ新鮮味が薄れた
2.価格を抑えたゆえの劣るスペックが実用領域で明らかになった
3.後発組の他社の新型車へと流れた
4.試しに買ってみた新規顧客層の嗜好が基本的には低価格EV向きではなかった

 これらのなかで「1」はさもありなんである。どんなクルマでも2年以上の時間経過は魅力の低下をともなう。これについては最新スペックこそが重要なEVともなればなおさらである。

「2」については、宏光MINIはその価格を抑えるために、使用する部品の多くを専用開発したものではなく汎用(はんよう)品を使っていたことが明らかになっている。そのため、カタログスペックとは別に信頼性は大丈夫なのかという顧客からの危惧は常にあった。結果的に、実際の信頼性とは別にイメージとしての脆弱(ぜいじゃく)さが表面化したことは否めない。

「3」については、多少価格は上がってもよいので、もう少ししっかりしたものが欲しいと考えるのはユーザー心理としては当然のことである。その結果、例えば比亜迪(BYD)の海鴎などの新型車に新規顧客の多くが流れたことは推測できる。

「4」については、好奇心半分で安いから試しに買ってみた新規顧客層が飽きるのが早かった。そして、そうした層からのマイナス評価が影響したのではないかということである。

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