物流ジャーナリストの私が「トラック高速道路無料化」に断固反対するワケ
「トラックの高速料金を無料化してほしい」、このような要望が、一部の運送事業者から聞こえてくる。運送会社の苦しい台所事情を鑑みれば、気持ちはわかる。だが本当に目指すべきは無料化なのだろうか。
なぜ荷主の負担を義務化できないのか
そもそも、(高速料金に限らず)すべての料金は、受益者負担が基本である。では、トラック輸送における真の受益者とは誰なのか。それは運送会社ではなく、
「荷主」
であるはずだ。
それにもかかわらず、運送コスト削減のために「高速料金は支払わない」などと不埒(ふらち)な主張をする荷主を許してきたことから、「トラックの高速料金を無料にしてほしい」などと
「筋違いの議論」
が登場してきたのだ。
「荷主は運送会社に対し、必要な高速料金を支払いなさい」
このように法制化してしまえばよいのに、
「荷主が払ってくれないなら、国民に負担してもらうか」(高速料金無料化)
という発想は、筋違いである。
繰り返すが「高速料金は支払わない」という荷主は、商流上、運送会社よりも優位にあることを悪用しているだけだ。独占禁止法では、「優越的地位の濫用」を禁じている。優越的地位の濫用とは、
「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること」(第2条第9項第5号)
であり、そのひとつが
「取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること」(同号ハの一部)
である。
「物流の2024年問題」によって、トラックドライバーの時間外労働時間の上限制限が課される今、高速道路料金を荷主が負担しないがために下道を走らされ、時間を浪費させられる――。これは間違いなく「取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定」すること以外のなにものでもないと考えるのは、筆者だけだろうか。