物流ジャーナリストの私が「トラック高速道路無料化」に断固反対するワケ
「トラックの高速料金を無料化してほしい」、このような要望が、一部の運送事業者から聞こえてくる。運送会社の苦しい台所事情を鑑みれば、気持ちはわかる。だが本当に目指すべきは無料化なのだろうか。
既に優遇されていたトラック

ここで考えたいのは、高速道路の通行料金における車種間比率である。1998(平成10)年に行われた道路審議会において、車種間の高速料金として「望ましい」と示された比率は以下である。
「軽自動車:普通車:中型車:大型車:特大車 = 0.8:1.0:1.2:1.65:2.75」
対して、実際の車種別高速料金の比率は以下の通りである(2018年)。
「軽自動車:普通車:中型車:大型車:特大車 = 0.85:1.0:1.08:1.1:2.08」
つまり、政府の指針と反して、現在の高速料金はトラックに優しく、乗用車(軽自動車を含む)に厳しくなっている。
この現況は、受益者負担の公平性という観点でそもそも問題である。それでなくとも、貨物重量を含めた車両の総重量は、乗用車に比べてトラックははるかに重たい。その分、道路へのダメージも大きいはずのトラックが、
「既に料金面では優遇されている」
のだ。この現状を踏まえ、トラックの高速道路料金が無料化されれば、乗用車のドライバーの不満は高まるだろう。
一応「税金から捻出する」についても言及しておくが、これは論外だ。道路整備のための財源に関する議論については、2008年の道路特定財源制度終了と、その前後のごたごたなど、いまだにきちんとした筋道がついているとはいいがたい。
その上、年間約7400億円(2021年度)におよぶ高速道路および有料道路の通行料金において、通行台数ベースで2割以上(繰り返すが料金ベースではない)を占めるトラックの通行料金を税金で賄うとなれば、その財源を巡って議論は紛糾するだろう。