意外と知らない? EVに「AMラジオ」が搭載されていない納得の理由
AMラジオ復活と市場への好感度
しかしここに来て流れが大きく変わり始めた。
きっかけとなったのは、米国においてあらゆる市販車からAMラジオの排除を禁止するべきという法案が超党派の議員団によって提出されたことである。これが2023年5月17日のことだ。
この法案提出は、以前から災害時の安全確保を理由にAMラジオの堅持を自動車メーカーに求めていた議員団が、メーカー側の消極的な態度に業を煮やし行動を起こしたものだった。
驚くべきはこの法案提出に対して、わずか一週間後の5月23日に、フォードが新たな発表を行ったことである。それは現在AMラジオを搭載していない全ての車両に対して、2024年モデルからAMラジオの装備を復活させる。過去に販売した未装備モデルについては
「ソフトウエアのアップデート」
で対応するという。
フォードとしては、法案に対して無駄に抵抗することなくできる範囲での対策を実施した方が得策との経営判断がなされた結果だろう。そしてスピーディーに対応することが、ひいてはユーザーと市場からの好感を得るきっかけにもなると判断されたのかもしれない。
この決定には、他にも注目すべき点がある。
それはラジオの電磁干渉対策において、シールド等による物理的な電磁波遮断ではなくソフトウエアでの対応が可能だという点だ。その具体的な内容について、発表されたばかりで技術的な詳細は明らかにされてはいない。しかし他社のラジオに対しても適用が可能であれば、EVとAMラジオの問題は一気に解決を見る可能性もある。
どのような技術でもそうだが、想定外のトラブルとその対応に直面せざるを得ないことは少なくない。しかし、そこで頭の固い対応で乗り切ろうとすることなく、柔軟な発想とともにスピーディーに行動することは良い結果を生むことも多い。
今回のEVとAMラジオの問題について、フォードの判断とその対応が業界全体を良い方向へと向かわせるきっかけとなることを個人的には期待したい。