運送会社に「満足な運賃」が支払われていない現実! 一般人は気にかけない、現場で続く“過酷ループ”をご存じか

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先日、M&Aキャピタルパートナーズがリポート「物流業界の運賃値上げ交渉の実態」を発表した。そこで明らかになった現場のリアルとは。

経営が厳しい「83%」

物流・運送業の経営者100人を対象に行われたインターネット調査(画像:M&Aキャピタルパートナーズ)
物流・運送業の経営者100人を対象に行われたインターネット調査(画像:M&Aキャピタルパートナーズ)

 企業の合併・買収(M&A)の仲介を手掛けるM&Aキャピタルパートナーズ(東京都中央区)が5月18日、リポート「物流業界の運賃値上げ交渉の実態」を発表した。物流・運送業の経営者100人を対象にインターネット調査を行い、その結果が公表されている。

 調査結果によると、「燃料費、人件費、車両関連費の高騰、小口配送の増加などが利益を圧迫し、近年経営が厳しくなっていると感じていますか?」という質問に対し、「経営が厳しくなった」と回答したのが

「83%」

である。大半の物流・運送業の経営が厳しくなっているという状況が見られる。

軽油価格の推移

1Lあたりの軽油の現金価格(画像:資源エネルギー庁のデータを基にMerkmal編集部で作成)
1Lあたりの軽油の現金価格(画像:資源エネルギー庁のデータを基にMerkmal編集部で作成)

 確かに燃料費は高止まりしており、資源エネルギー庁が公表している給油所が販売している軽油価格の推移を見ると、軽油1L当たりの価格(税込み価格)は2016年には100円前後だったものが、2018年には120円台から130円台に上昇。

 2021年以降は130円台から150円台となっている。直近の2023年も140円台後半の価格が続いている。仮に120円から145円に上昇した場合の値上がり率は20%以上となる。

 当たり前だが、トラックは燃料がなければ走ることはできない。走ることができなければ運送会社としての業が成り立たない。

 物流・運送業は、省燃費運転を行うにしても高い燃料代を削減することは現実的には難しいのである。

半数以上が運賃交渉実施

物流・運送業の経営者100人を対象に行われたインターネット調査(画像:M&Aキャピタルパートナーズ)
物流・運送業の経営者100人を対象に行われたインターネット調査(画像:M&Aキャピタルパートナーズ)

 トラック輸送に関わる経費が上がっていることに対し、運送会社は収受する運賃の値上げを考えざるを得ない。しかし、運賃の値上げ交渉は容易なことではないだろう。

 M&Aキャピタルパートナーズの調査結果によると、「荷主企業に対する運賃の値上げ交渉の意向」としては、52%が「既に運賃交渉を行っている」、19%が「運賃交渉をする予定がある」と回答している。

「運賃交渉の予定はない」という企業は22%となっているが、交渉の予定はないものの、「今後、運賃の値上げ交渉をしたい」という企業は72.7%となっている。多くの運送会社で運賃の値上げ交渉を行っている、あるいは今後交渉を行いたいという状況である。

希望通りの値上げ、わずか「17.3%」

物流・運送業の経営者100人を対象に行われたインターネット調査(画像:M&Aキャピタルパートナーズ)
物流・運送業の経営者100人を対象に行われたインターネット調査(画像:M&Aキャピタルパートナーズ)

 しかし、交渉を行って、希望通りの値上げを得られた企業は17.3%、値上げしてもらったが要望より少なったところが30.8%となっている。

 交渉しても運賃の変化はなかったと回答した企業は25%、交渉した結果、取引がなくなってしまったという企業は1.9%であった。

 大手の運送会社では荷主に対して多少強気に出ることができるかもしれないが、トラック輸送の大半を担う中小運送業ではその力関係によって希望通りに運賃値上げを実現できる割合は大きくない。

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