気動車は時代遅れ! 脱炭素時代のJR西日本「燃料電池車」導入に立ちふさがる2つのぶ厚い壁とは
迫られる非電化区間の脱炭素化
温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルへ国を挙げて向かうなか、JR各社も非電化区間の脱炭素化を迫られている。JR西日本は燃料電池車導入へかじを切った。
出発を待つ8両編成の大和路快速の隣のホームに、1両編成の気動車(ガソリン・ディーゼル機関などの内燃機関を有する鉄道車両)が入ってきた。三重県亀山市のJR亀山駅からやってきたワンマン列車だ。
乗客は少数だが、電化された大和路快速に乗り換え、大阪方面へ向かう。京都府木津川市のJR加茂駅は大阪、京都都市圏の端に位置し、大都市近郊の通勤路線と過疎地のローカル線が混在している。
大和路快速の電車、亀山~加茂間の気動車とも、走る路線は関西本線になる。関西本線は名古屋市の名古屋駅から三重県、京都府、奈良県を通って大阪市のJR難波駅へ向かう174.9km。亀山駅以東をJR東海、以西をJR西日本が運行している。
高度経済成長期の1960年代まで名古屋市と大阪市を結ぶ幹線だったが、東海道新幹線の開業などでその立場を失った。過疎地を走る亀山~加茂間は、1km当たりの1日平均旅客輸送人員を示す輸送密度が2021年度で
「766人」
しかなく、存続が危ぶまれている。
脱炭素時代に合わない気動車
JR西日本を悩ませるのは、利用者の減少だけでない。亀山~加茂間が
「非電化区間」
であることもそのひとつだ。日本社会は2020年、菅義偉首相(当時)が2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を宣言して以来、脱炭素化を加速している。
非電化区間の気動車は、軽油を燃料とするディーゼルエンジンで走る。鉄道はトラックなど他の輸送機関ほど多くの温室効果ガスを排出しないが、ガソリン自動車が電気自動車や燃料電池車などへ転換を迫られているのと同様に、気動車も脱炭素化を求められているわけだ。
京都府南山城村の月ケ瀬口駅から奈良県奈良市へ向かう60代の女性は
「SDGs(持続可能な開発目標)の時代なのに、いつまでも気動車を走らせるわけにはいかないわね」
と話した。
脱炭素化の方法としては電化が考えられるが、JR西日本が運行する全在来線約4000kmの電化率は
「63.2%」
となっている。非電化区間をすべて電化するとなると、膨大な費用がかかり現実的でない。
他の手段として、植物から作る液体燃料のバイオディーゼルや水素があるが、JR西日本は水素を燃料とする燃料電池列車を選んだ。JR西日本は
「気動車を燃料電池列車に置き換えることを目指し、技術開発を進める」
としている。