気動車は時代遅れ! 脱炭素時代のJR西日本「燃料電池車」導入に立ちふさがる2つのぶ厚い壁とは
温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルへ国を挙げて向かう中、JR各社も非電化区間の脱炭素化を迫られている。JR西日本は燃料電池車導入へかじを切った。
コスト高の克服が最大の課題
燃料電池列車導入の動きは他社でも見られる。JR東日本は2022年、試験車両を開発し、2030年の実用化を目指して走行試験を続けている。ドイツのハンブルグでは、フランスの鉄道車両メーカー・アルストムが開発した燃料電池列車が2022年、本格運行に入った。
しかし、実用化に向けて乗り越えなければならない課題がふたつある。ひとつは
「航続距離」だ。
鉄道車両は一般に1日約300km走行するが、JR東日本の試験車両の航続距離は約140km。ドイツなどより線路の幅が狭い在来線を走らせるため、車体が小さくなって水素貯蔵のスペースを十分に確保できない。
もうひとつは
「コストの高さ」
だ。JR東日本の試験車両の製作費は電車よりはるかに高いという。しかも、水素自体が割高で、資源エネルギー庁は
「発電燃料に使用すれば液化天然ガスの約7倍になる」
としている。
豪州などで採掘される褐炭から取り出せばある程度、価格を抑えられるが、この場合は製造過程で大気中にCO2が放出される。CO2を回収する対策を加えるか、水を再生可能エネルギーで電気分解する方式に切り替えないと、排出抑制の役割を果たせない。
日本で割高な再エネコスト
ただ、再エネコストも日本は割高だ。米ブルームバーグによると、太陽光発電のコストは1MW時当たりで中国やインド、豪州が40ドルを下回っているのに対し、日本は
「100ドル」
を超えている。現在の水素販売価格は1ノルマル立方メートル(0度、1気圧における気体の体積の単位)当たり100円程度。政府はこれを30円に下げようとしているが、道は険しい。
計画を実現させるために、これらの課題をどうやって乗り越えていくのか、JR西日本の力量が問われている。