“危機的”国内防衛産業の維持へ国が本腰 「輸入増→撤退→基盤崩壊」悪循環どう断ち切る
海外に売れた装備はレーダー1件
条件付きながら、防衛装備品の海外移転を可能とした防衛装備移転三原則が2014年4月に制定されてから間もなく7年半が経過するが、自衛隊から退役した航空機や航空機部品の譲渡を除けば、海外への防衛装備品の輸出実績は、2020年8月にフィリピンとの間で成立した警戒管制レーダーしかない。
日本の防衛装備品が国際市場で競争力を持てない理由の一つは、輸出後のサポート体制が他国に比べて貧弱なことにある。工業基盤が充実している先進国以外の国への防衛装備品の輸出にあたっては、輸出後も長期にわたって保守整備のサポートが求められることが多い。このためアメリカ、ヨーロッパ、ロシアなどの企業は、自国の軍で輸出する防衛装備品の運用や維持整備に携わっていた退役軍人を雇用して輸出国の軍をサポートしている。
これまで日本の防衛産業には他国の軍が運用する防衛装備品の維持整備を支援できる体制がなかったが、令和4年度は東南アジア諸国を対象に、民間企業と防衛省・自衛隊が一体となって、防衛装備品の維持整備の技術支援を行う計画で、そのための経費として2億円を要求している。
防衛装備庁は在日アメリカ軍の防衛装備品の維持整備によって培われた国内企業の高い技術力を活かして、外国の軍が運用するアメリカ製防衛装備品のMRO(整備・補修・オーバーホール)事業への国内企業の参画も模索している。令和4年度に計画されている東南アジア諸国へ向けた防衛装備品の維持整備の技術支援は、防衛装備品の輸出だけではなく、外国軍が運用するアメリカ製防衛装備品のMRO事業へ参入することへの足がかりを築く意味もあるものと考えられる。
防衛省が令和4年度に計画している防衛産業基盤強化のための取り組みは、いずれも有効なものであると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思うが、すでに国内防衛産業基盤は危機的状況にあり、迅速に具体的な施策を実行していくことが求められる。