「僕はガソリン臭いクルマが好き」 2019年・豊田章男氏の“本音”にみる自動車メーカーの理想と現実、EV礼賛社会で考える

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豊田章男氏は2019年、「野性味あふれるクルマが好きなんです」と本音を語った。その背景から、自動車メーカーの理想と現実、日本企業の行く末を考える。

自動車メーカーの理想と現実

エンジンルーム(画像:写真AC)
エンジンルーム(画像:写真AC)

 実はこうしたことはトヨタだけに限ったことではない。

 筆者(矢吹明紀、フリーランスモータージャーナリスト)はこれまでトヨタほか、自動車メーカーの経営陣やエンジニアなど、多くの人物に直接話を伺う機会に立ち会っている。発表会などの公式な場もあれば、試乗会での同乗で1対1というのも少なくなかった。

 そこでときとして本音で語られたことは、豊田章男氏の場合と大差はなかった。

・自分が最初に運転したクルマ
・最初に買ったクルマ
・感銘を受けたクルマ
・憧れだったクルマ
・設計に携わったクルマ
・責任ある立場と共に市場に送り出したクルマ

それぞれに熱い思いを語ってくれることは珍しいことではなかった。すなわち、皆まぎれもない熱い“クルマ好き”だったということである。

 こんなことをいうと、

「それなら、なぜ客観的に見て面白みに欠けるクルマが世に出てくるのか」

などという人もいるだろう。それは大企業のなかで、理想だけでは商品化はできないという現実ゆえである。特にクルマは全てのパーツで1円単位でのコスト制限が課せられるのが常である。

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