「僕はガソリン臭いクルマが好き」 2019年・豊田章男氏の“本音”にみる自動車メーカーの理想と現実、EV礼賛社会で考える
豊田章男氏は2019年、「野性味あふれるクルマが好きなんです」と本音を語った。その背景から、自動車メーカーの理想と現実、日本企業の行く末を考える。
EV全振りは中国のみ
一方、わが国の状況はどうか。ハイブリッド車(HV)の普及は進んだ。現時点で市場を席巻している感もある。今はプラグインハイブリッド車(PHV)とEVの普及とその後継が何になるのかが課題である。
とはいえ、その未来図はまだハッキリしていない。このままEVがシェアを伸ばすのか。その一方でいくつかのメーカーは
・水素燃料内燃機関
・水素燃料電池
に未来を賭けている様にも思える。状況はEU以上に混沌としている。
それは北米もまた同じである。EVに対して国家としてまい進しているのは中国くらいといって良いかもしれない。こういうとき、上意下達・右向け右で同じ方向に進める共産国家は強い。
異例だった豊田章男氏の2019年発言
さて、ここである人物の言葉を紹介したい。既にご存じの人も多いと思われる「モリゾウ」こと豊田章男トヨタ自動車会長が社長時代(2019年)に語った一言である。いわく
「僕はね、ガソリン臭くてね、燃費が悪くてね、音がいっぱい出る、野性味あふれるクルマが好きなんです」
これは自動車会社のトップの発言としては異例中の異例の出来事だった。
発言の時点で脱炭素社会に向けて、会社としての方針を明確にしていたことを思えばなおさらである。
この発言で、多くの自動車好きが
「トヨタは内燃機関の未来を諦めてはいない」
と胸をなでおろした。
豊田章男氏は自らステアリングを握りテストコースを走る、まさに走ることで自社の製品を確認する経営者だった。その上で必要とあらばレースカーのステアリングを握ることも多々あった。
世のクルマ好きと全く同じ目線でクルマの開発に臨み、その商品化に努めていたことは間違いない。