自動車メーカー・サプライヤー間の「値下げ交渉」、もはや“商慣習”になっているワケ

キーワード :
, ,
自動車業界では、自動車メーカーとサプライヤー間で「値下げ要請交渉」が定期的に行われており、それが行われないことがニュースになる。その商慣習の理由を解説する。

「自動車産業全体の競争力強化」狙う

自動車部品のイメージ(画像:写真AC)
自動車部品のイメージ(画像:写真AC)

 自動車業界は自動車メーカーを頂点とし、その下に多くの1次サプライヤー、2次サプライヤーなどのサプライヤーがいるというピラミッド構造になっている。車両一台を生産するために必要な部品点数は3万点(内燃機関車の場合)とも言われており、文字通り自動車業界は多くのサプライヤーに支えられる形で成り立っている。

 つまり、自動車メーカーだけが利益を享受するような業界構造では不健全であり、持続不可能だと言える。そのため自動車業界のピラミッドを構成する各社がいずれも利益を享受し、業界全体として繁栄できるよう、自動車メーカーを中心に「育てる調達」「共存共栄を目指した調達」などといった呼称で、自動車産業全体の競争力強化に資するような戦略的な調達が商慣習として行われてきた。

 これは結果的に、調達と供給を行う両社が、製品の原価低減や品質向上に向けて目標と成果を共有することにより、両社間で「協調的投資」を促すような取引慣行となっている。

 言い換えると、値引き要請交渉の商慣習は「より良い商品を、より安い価格で」提供し、競争優位性を高めることで市場シェアを獲得し、結果として自動車メーカーとサプライヤーとが「共存共栄」していくための仕組みとなっているのだ。

全てのコメントを見る