富山空港「公設民営」導入へ 県のコロナ禍決断は無謀か、それとも先見か? 地方空港の見えぬ行方とは

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富山県は、富山空港の運営に公設民営の混合型コンセッション方式導入を決めた。北陸新幹線延伸とコロナ禍で利用が落ち込むなか、民間活力が打開策となるのだろうか。

年間約1800万円の収支改善を期待

飛行機(画像:写真AC)
飛行機(画像:写真AC)

 富山県は、富山空港の運営に公設民営の混合型コンセッション方式導入を決めた。北陸新幹線延伸とコロナ禍で利用が落ち込むなか、民間活力が打開策となるのだろうか。

「現状を考えると、このまま公営で運営するより、民間活力を導入するほうが良いと判断した」

 富山県の新田八朗知事は2月上旬の定例記者会見で、富山県が管理する富山空港の運営を民間に任せる考えを明らかにした。

 施設を富山県が保有したまま、運営権を民間に売却するコンセッション方式で、売却期間を10~15年とし、事業者から申し出があれば期間延長が可能な枠組みにする。富山県の試算では、民間活力の導入でコロナ前の2019年度と比べ、年間約1800万円の収支改善が見込めるという。

 富山空港は富山市の神通川河川敷にあり、東京、札幌の国内2路線と、台北、上海など国際4路線が就航している。しかし、2015年の北陸新幹線金沢延伸で主力の東京線利用客が半減したうえ、コロナ禍で国際線が運休している。

2020年度の利用客、わずか約6万7000人

富山空港(画像:写真AC)
富山空港(画像:写真AC)

 年間の利用客は2014年度の約98万人が、2019年度に約55万人まで落ち込んだ。コロナ禍で国内線が減便し、国際線が運休した2020年度はわずか約6万7000人でしかない。北陸新幹線延伸とコロナ禍のダブルパンチで青息吐息の状況だ。

 富山空港の収支は、航空系事業の赤字が2014年度までの5年間で平均約1億4000万円だったのに対し、2019年度に約5億6000万円へ拡大した。ターミナルでの飲食、物販など非航空系事業は2019年度まで経常黒字を達成してきたが、黒字幅は2015年度の約1億9000万円が2019年度に約1億3000万円に縮小している。

 新田知事は

「コンセッション方式導入で劇的な経営改善がなされるわけではないが、新路線開拓や空港エリアのにぎわい創出に力を発揮してくれるのでないか」

と民間活力による立て直しに期待をにじませた。富山県は2023年度一般会計当初予算案に運営事業者公募の準備などを進める「富山空港民間活力導入準備事業」として6100万円を計上している。

 過去の事例では、運営事業者の選定に準備期間も含めて2年程度かかっている。富山県航空政策課は

「事業者選定を終え、運営を民間に委ねるのは2025年度以降になる」

と見通しを説明した。

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