フランスの自動車広告がなぜか「徒歩」「自転車」「公共交通」を熱心に勧めるワケ【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(8)
フランスから始まるかしこいクルマの使い方キャンペーン

2022年3月1日から、フランスでは新車販売の広告媒体に、必ず、
「短距離移動には、徒歩や自転車を優先利用しよう」
「相乗りを考えよう」
「毎日の移動は公共交通機関を利用しよう」
のうち、ひとつのメッセージを入れることが義務付けられた。日本と同様に自動車産業が国の基幹産業のひとつであるフランスで、このような取り組みが始まっていることには驚きを隠せない。
また、上記メッセージと合わせて「#SeDeplacerMoinsPolluer(環境汚染の少ない移動を)」というハッシュタグを掲載すること、さらには、宣伝する車両には、CO2の排出量クラスを明記することも合わせて義務化した。CO2排出量のクラスは、走行時の排出量がゼロのAランクからGランクまでの7段階、緑から赤色に色分けされ、販売する車両がどのカテゴリーに該当するかも、ユーザーに提示しなければならない。緑色と赤色の表示のインパクトは写真の通りだ。今後、国民の自動車選択行動に大きな影響を及ぼしていくのではないだろうか。
規制対象は紙媒体だけではなく、テレビ、ラジオ、映画、SNSなどの全ての広告媒体であり、違反した場合には最大5万ユーロ(約700万)の罰金が科せられる(2022年6月1日から罰金の運用を開始した)。広告表示が義務化された3月からの広告媒体を見ていると、自動車会社の宣伝広告という性格上、相乗りを推奨するフレーズが選択されているかといえば、そうでもなく、3つのフレーズを適宜選択しているようだ。
フランスでは、温室効果ガスのうち、3割を移動によるものが占めることから、政府は、自動車の電動化だけではなく、他の交通手段の利用も重要政策と位置付けている。市民ひとりひとりにカーボンフリーな移動手段の保有と日々の利用の両方に対して、賢いクルマとの付き合い方を啓発していく国民運動、一大キャンペーンが始まっている。