携帯会社なのになぜ? 3大キャリアが「シェアサイクル」「タクシー配車」事業に本気で取り組むワケ
各社がモビリティ事業に取り組む3つの理由

各社がモビリティ事業に取り組む理由は3つあると考える。
ひとつ目は通信事業との親和性だ。この10年で利用者とモビリティサービスのデジタル接点は急激に増加した。モビリティのつながる化が進む中、シェアサイクルのような新しいモビリティサービスが生まれ、市民権を得てきている。各種モビリティを端末と捉えると、将来的な自動運転車両も含めて、ネットワークにつながる端末を増やすことは、そのままキャリアにとって既存事業の強化・成長につながるだろう。
ふたつ目はユーザー接点の強化だ。通勤・通学、買い物、レジャー、通院など、人が何らかの行動を起こすために、移動は欠かせない。スマホが普及し、いろんなモビリティがネットワーク化されていく中、「MaaS」や「モビリティ×○○」というトレンドがさまざまなプレーヤーに注目されているのは、ユーザー接点の広さと多様性にあると考えられる。
キャリアも可能性を探っている段階ではあるが、モビリティサービスでの顧客接点構築を起点として、移動先にあるさまざまなサービスとの連携、移動・消費データ取得、決済獲得などでエンドユーザー向けだけでなく、事業者向けのビジネス機会創出を狙っている。実際、NTTドコモは三浦半島や千葉市で、KDDIは沖縄や徳島で実証実験に参画し、MaaSアプリやMaaSデータ基盤を提供している。ソフトバンクは、MONETのプロジェクトを中心にモビリティとさまざまなサービスを掛け合わせた取り組みを行っている。
3つ目はスマートシティへの発展期待だ。スマートシティなどのさらなるビッグピクチャーにおいて、モビリティはその一構成要素である。モビリティは手段であるが、先に述べた通り、その他のサービス領域との関係性や親和性が高く、ビジネス機会の広がりは他の分野よりも大きい。
また、車両の電動化が進むことで、エネルギーマネジメントへの影響も小さくなく、スマートシティを支える基盤としてコアな構成要素である。あらゆるものがつながり、ネットワーク化されていく世界でキャリアが果たす役割は大きく、その意味で、各社がコアな構成要素であるモビリティへの関心を高めていることは当然の流れと言えるだろう。
おわりに
テスラや中国系電気自動車(EV)メーカーに見られるように、車両をデバイスのように捉えてソフトウエアのアップデートを付加価値として提供する動きもみられる。車両のデバイス化が進むことで、車両の使い方、車内空間の過ごし方に大きな変化が見込まれ、そこにはこれまでの車両では創造できなかった新しいビジネスも出てくるだろう。従来の業界の垣根が溶け合い、キャリアだけではなく、その他のプレーヤーにとっても大きな機会であり脅威となる変化が今まさに起こっている時代と言えよう。