富裕層の誘致に狂乱する「観光庁」 旅の本質を忘れたなら、もはや「インバウンド産業庁」に改称すべきだ

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観光庁が富裕層旅行者の誘致に力を入れようとしている。その大きな問題点を2つ述べたい。

「大富豪旅行者」意識した観光地づくり

 高付加価値旅行者(以下富裕層旅行者と記す)の誘客促進の背景には、以下のような状況がある。コロナ禍前で多数の訪日客のあった2019年の統計では、富裕層旅行者の数は外国人旅行者全体の約1%(29万人)に過ぎないが、消費額では約11.5%(5523億円)を占めている。全体の消費額を押し上げるための戦術としては、まさにこの富裕層をターゲットとして誘致を進めることが最も効率的で、一見正解に見える。

 そのため観光庁では2022年8月、富裕層向けのモデル観光地(国内)を公募した。選定基準は「高付加価値なインバウンド観光地づくりに向けたビジョンが地域で共有され、推進体制の構築に向けた機運が醸成されている」ことなどとしている。

 2022年度内に国内10カ所程度のモデル観光地を決定し、選ばれた観光地へは「観光地経営体制の整備に向けた支援」や日本政府観光局(JNTO)による「海外セールスの強化」等が行われる。国内に富裕層向けに特化した観光地をどんどん増やそうというわけである。

 このほか同政策として、観光目的の外国籍プライベートジェット機の乗り入れ申請手続きの簡素化、スーパーヨットでの長期滞在を実現するための環境整備などの検討にも触れている。まさに大富豪旅行者を意識したものである。

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