富裕層の誘致に狂乱する「観光庁」 旅の本質を忘れたなら、もはや「インバウンド産業庁」に改称すべきだ

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観光庁が富裕層旅行者の誘致に力を入れようとしている。その大きな問題点を2つ述べたい。

富裕層誘客、2つの大きな問題

観光庁は「インバウンド」に期待(画像:写真AC)
観光庁は「インバウンド」に期待(画像:写真AC)

 新型コロナ対応の水際対策が大幅に緩和(2022年10月)され、街中を歩く外国人観光客が目につくようになった。岸田文雄首相は同月の所信表明演説で、訪日外国人旅行消費額について年間5兆円超を目指すと明言し、観光庁もインバウンドの回復に向けた政策パッケージを発表している。

 その中で観光庁が冒頭に掲げているのが「高付加価値旅行者の誘客促進」である。

「高付加価値旅行者」とは、舌をかみそうな言葉だが、要は日本にたくさんのお金を落としてくれる富裕層旅行者のことだ。観光庁の定義によれば、訪日旅行一回で一人当たりの総消費額100万円以上の旅行者を「高付加価値旅行者」と呼ぶ。カップルで訪日すれば200万円以上、家族4人なら400万円以上を日本で消費してくれる人たちである。

 人(旅行者)の価値の高低を決めるのが、単にお金を使ってくれる額という言葉の使い方にも異論を唱えたいが、ここではその点は深入りせず、さらに大きな2つの問題点を述べていきたい。