最強パワーボート兼最高級クルーザー! 米レイクタホで余生を過ごす伝説の「サンダーバード」をご存じか

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アメリカ西海岸の観光地、レイクタホに、建造から80年余りたつマホガニーウッド製大型クルーザー「サンダーバード」がある。その歴史を紹介する。

文化遺産として保護

サンダーバード。操縦席は言うまでもなく、サーチライトやホーンに至るまでそのディテールに隙はない(画像:守山進)
サンダーバード。操縦席は言うまでもなく、サーチライトやホーンに至るまでそのディテールに隙はない(画像:守山進)

 しかし1941年12月に太平洋戦争が勃発すると、彼のこうした優雅で豪快な遊びも社会的に容認されなくなっていった。ウィッテルはロッジに引きこもりがちになり、サンダーバードがボートハウスから引き出されるのも、人目を避けるように月の出ていない闇夜のみとなったと言われている。

 こうして長い時間が流れた。サンダーバードはこの間も件(くだん)のボートハウスで保管されていたものの、ウィッテルが高齢になると湖に出ることもほとんどなくなり、次第にその存在自体が忘れ去られていった。

 ジョン・ウィッテルは1969年、88歳でこの世を去った。サンダーバードをどうするかについては遺族の間で話し合いが行われ、最終的にウィッテルの長年の友人の一人であり、ネバダ州リノにおいて巨大カジノホテルを経営していたウィリアム・ハラーが維持を引き継ぐこととなった。

 ハラーは、長い保管期間を経て傷みが見え始めていたサンダーバードを建造当時の状態に完璧にレストアすると同時に、2基のエンジンを、航空機用アリソンV1710V型12気筒1100hpをマリン仕様にモディファイ(改造)したスペシャルにした。さらにアッパーコクピットにも、新たにオリジナルのテイストに合わせたキャビンを装着するなどした。

 こうして「サンダーバード」はよみがえった。しかし1980年代、ハラーはカジノ経営に失敗して破産。サンダーバードの去就が心配されたが、新たに設立されたウィッテルの財団によって、現在はボートロッジと共に文化遺産として保護されている。

 人に歴史あり、そしてボートにも歴史あり。一人の道楽者の夢としてこの世に生を受けた希代の名艇は今、レイクタホにおける最高のマスコットとして、見る者を楽しませている。サンダーバードは今でも時折湖に姿を見せる他、毎年6月にレイクタホで開催されるウッドボートショーには必ず姿を見せている。今回掲載している写真は、まさにそのショーにて筆者が撮影したものである。

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