デザインの似た鉄道車両、なぜ増えた? コスト削減の背後にある「規格化」というデカい潮流
規格化を進める車両メーカー

こうした規格化は、多くの主要鉄道車両メーカーで行われている。
例えば、日立製作所の「A-train」は、アルミ押し出し型材を使用したダブルスキン構造を使用した車両シリーズである。東武鉄道の最近の車両や、東京メトロの多くの新型車両、相模鉄道の東急・地下鉄直通車両の20000系などに使用されている。
総合車両製作所がステンレスに強みを持つならば、日立製作所はアルミに強みを持つ。規格化をすることで、「A-train」シリーズでは納期を短縮することができた。
アルミ車両もステンレス車両も規格化したのが、川崎重工業(現在の川崎車両)だ。「efACE」の車両はJR西日本を中心に使用されており、JR四国や関西圏の一部私鉄でも使用例が見られる。どの車両メーカーも、ステンレス車であれアルミ車であれ、台枠や構体などを規格化し、それを組み合わせることで車両をつくるようにしている。
日本車両製造もこの流れに乗ってきた。同社では、もともと「日車式ブロック工法」という製造法で、側構体をブロックごとにつくって最後に各ブロックを溶接するというやり方で作業効率をアップしていた。それをベースにブランド化したのが「N-QUALIS」である。このブランドを最初に採用したのは、日本車両製造の親会社であるJR東海の、315系だ。
日本車両製造自体、車両の規格化を推し進めてきた歴史がある。地方私鉄向けに
・日車標準車体
・日車ロマンスカー
という車両シリーズを提供し、古い車両から一気に新しい車両へと切り替えることを可能にした。
「N-QUALIS」というブランドにしたのは2021年だが、以前から標準化への問題意識が高かったのが、日本車両製造だ。
国鉄時代は、どの車両メーカーも国鉄からの同規格・大量発注を受けていれば問題はなかった。私鉄には発注通りの車両を供給していれば済んだ(なお、国鉄時代は多くの場合私鉄車両の方がクオリティーは高い)。
しかし現在では、車両メーカーが規格を持ち、鉄道会社に提案できる時代だ。ブランドを背景に、低コストと高クオリティーを提供するようになった。そんな中で、似ているが少しずつ違う車両が、各事業者で走るようになったのである。車内に車両メーカーの名前が掲出されているので、気になる人はチェックしてはいかがだろうか。