進まぬ日本の「無電柱化」 このペースなら完了は1500年後、なぜこんなに遅いのか?
日英で異なる景観に対する意識

どうしてこんな状態になったのだろうか?
その理由として考えられるのは、
「電柱の本数が増えている」
ことだ。2021年度には全国で20万5000本が撤去されたが、新設されたのは25万3000本。差し引き、4万8000本が増えた計算になる。
電話をつなぐ通信用の電柱は減ったものの、電気を送る電柱は増加している。その多くが配電網から外れた場所にある新築家屋向けだ。無電柱化は1本や数本を地中化したのではコストが見合わない。国交省は新たに電柱を建てざるを得ないのが実情と見ている。
日本の道路は幹線を除き、幅員が狭いため、管路を埋設するために用地確保が必要になる場所が少なくない。しかも、国や地方自治体が財政難に苦しむところへ高コストが重くのしかかる。このため、国や自治体の動きはどうしても鈍くなる。
日本の道路総延長は約120万km。国交省は2021年度から5年間で約4000kmの無電柱化に着手する計画を打ち出している。年間にすると約800km。このペースで整備が続けば、「120万km÷800km」の計算式で、すべてが無電柱化されるのは
「1500年先」
になる。1500年前といえば古墳時代の終わりに当たる。日本にようやく古代国家が形成された時代から今までと同じ歳月を費やさなければならないと考えたら、気が遠くなる。
第2次世界大戦後、東京や大阪と同様にロンドンも焼け野原から復興を始めた。東京や大阪が低コストを優先し、電柱を建てて電気や電話線を通したのに対し、ロンドンは戦前から電線を地下に埋設していたこともあり、無電柱化の道を選んでいる。そこに見えるのは
「景観に対する意識の差」
だ。
工事にかかる予算を考えれば、気が遠くなるほどの時間がかかることに変わりないが、日本人全体が都市景観の大切さに気づかなければ、いつまでたってもガラパゴス状態から抜け出せそうもない。