進まぬ日本の「無電柱化」 このペースなら完了は1500年後、なぜこんなに遅いのか?

キーワード :
,
東京五輪が終わり、大阪・関西万博が3年後に迫っているのに、日本の道路は無電柱化が遅々として進んでいない。どこに原因があるのだろうか。

大阪市6%、東京23区8%、世界と大きな差

大阪市における無電柱化事業のイメージ(画像:大阪市)
大阪市における無電柱化事業のイメージ(画像:大阪市)

 大阪市は2019年、無電柱化推進計画を策定し、無電柱化を進めている。大阪都市魅力創造戦略2020では、重点エリアに梅田の大阪駅周辺、難波周辺、天王寺・阿倍野地区、大阪城・大手前・森之宮地区、御堂筋地区、中之島地区、築港・ベイエリア地区、2025年の大阪・関西万博で会場となる夢洲を挙げている。

 電線を地中に埋設すれば、整備工事に1km当たり3.5~5億円という高い費用がかかるうえ、停電時の復旧に時間がかかり、幅員の狭い道路であっても変圧器設置場所を確保しなければならないなどデメリットがある。

 しかし、メリットはより大きい。そのひとつが

「都市防災機能の強化」

だ。

 2019年に関東を直撃した台風15号では、千葉県で約2000本の電柱が倒壊や損壊して大規模な停電が長期化したが、そうした不安は消える。歩道を広く使えて交通安全やバリアフリーにも役立つ。

 さらに、大阪・関西万博で世界から大勢の観光客が来阪すると見込まれている。景観を台無しにして散策を味気ないものにする電柱や電線を見えなくすれば、大阪の街を世界にアピールできる。ところが国土交通省によると、大阪市の全道路延長に占める無電柱化率は2020年度末で

「6%」

となっている。これでも特別区・政令指定都市で2位というから驚きだ。トップの東京23区は、東京五輪に合わせて都道の無電柱化を推進したにもかかわらず、8%にとどまっている。

 特別区・政令市で5%に達しているのは、ほかに名古屋市だけ。残りは1~3%台でしかない。それ以外の市町村になると、兵庫県芦屋市のように市道の14%以上を無電柱化した例外があるものの、大半はほとんど手つかずに近い状態だ。

 これに対し、海外の主要都市はロンドンやパリ、シンガポール、香港が既に100%に達しているほか、台北も96%まで整備が進んだ。東京23区や大阪市の現状は、

「ガラパゴス状態」

といえる。

全てのコメントを見る