自動車と高齢者は共生できるか? ドリフ仲本さん事故に見る、交通ルール再啓発の重要性とは

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ザ・ドリフターズの仲本工事さんが10月18日、交通事故による急性硬膜下血腫で亡くなった。事故現場を訪れた記者が感じたこととは。

現場で聞く地元民の声

介護情報誌『あいらいふ』4-5月号の表紙を飾る仲本工事さん(画像:あいらいふ)
介護情報誌『あいらいふ』4-5月号の表紙を飾る仲本工事さん(画像:あいらいふ)

 洪福寺バス停で待つ高齢者に話を聞く。

「信号機が近くても、年をとるとおっくうに思うことはあります。私はしませんけど、なんとなく渡っちゃうんでしょうね」

 ここから信号機のある洪福寺交差点は20mほど、というか目の前といってもいい。それでも高齢で足腰が弱くなると近道のつもりでつい渡ってしまう、ということか。

「それもあるのでしょうけど、昔はおおらかでしたから、この辺だって今よりずっと田舎でした。信号を守るって感覚がないままの方もいらっしゃるでしょうね、若いころのまま、大丈夫だろうって」

 なるほど、筆者(日野百草、ノンフィクション作家)も田舎育ちのため、正直なところそういう感覚がいまだにあるように思う。渡れるなら渡ってしまおうか、車が来ていないし、と。昔はみな普通に横断していたように思う。昭和の感覚のまま、ということだ。

「でもむちゃですよ。仲本工事さん、残念ですね」

 仲本さんは妻の店に行くため、たびたびこの地を訪れていたという。慣れもあったのかもしれないが、80歳を過ぎると高校時代、元体操選手だった仲本さんであっても注意力はもちろん反射神経も衰える。ましてこの交通量である。結果論で責める気はないが、やはりむちゃだった。この短い区間でさらに信号機を増やすのも現実的ではないだろう。

横浜市西区で起きた事故

一灯式信号(画像:写真AC)
一灯式信号(画像:写真AC)

 全国的にはむしろ信号機の撤去が進んでいる。交通量や歩行者が減少した地域の交差点や横断歩道が対象で、不要な信号による物流面での経済的な損失はもちろん、維持管理コストを削減する狙いもある。

 警視庁は2019年3月にも、交通実態にそぐわない信号機を撤去するよう都道府県警に通知を出した。撤去せずとも一灯式に変更する地域もある。

 いっぽう、首都圏などでは信号機はむしろ今も増え続けている。それに対して渋滞を引き起こしているという批判もある。実際、例えば大久保通りの一部区間などは信号だらけで渋滞(これでも時差式などで以前よりは改善されているのだが)が慢性化している。

 しかし、高齢者を含めた歩行者の安全を考えれば信号機の撤去というのも難しい。また信号機があっても、横断禁止の場所を渡ってしまう人もいる。状況によってはドライバーも避けようがない。今回、事故を起こした福祉施設のドライバーもそうだったに違いない。

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