やっぱり、空港アクセス鉄道は「ロングシート車両」一択であるワケ

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一般列車は空港アクセス鉄道に特化した車両が少なく、既存のロングシート車両で対応していることが多いが、実は“普段の列車”こそが渡航客のウケがよいのだ。

転換クロスシートにこだわるJR西日本

阪和線、関西空港線の一般列車は近郊形電車に統一された(画像:岸田法眼)
阪和線、関西空港線の一般列車は近郊形電車に統一された(画像:岸田法眼)

 ふたつ目はJR西日本。関西空港線が開業した1994(平成6)年6月15日より、転換クロスシートを装備した近郊形電車が使われている。関西国際空港自体は3か月後の9月4日に開港し、関空快速がデビューした。

 関空快速に使用する車両は空港アクセス鉄道に特化した設計で、通路幅を確保し、大型荷物が通路に置きやすいよう、転換クロスシートはひとり掛けと2人掛けの配置とした。これにより、快適性と機能性を両立した。

 ロングシートは左右どちら側の席でも大型荷物が気兼ねなく置けるのに対し、転換クロスシートはひとり掛け席のみしかできない難点を持つ。ただ、関西国際空港アクセスは先述の南海電気鉄道も担うほか、関西には国内線専用の大阪国際空港(伊丹空港)、神戸空港が点在しており、新千歳空港のように渡航客の一極集中はない。

 このスタイルは阪和線の快速系統、各駅停車にも広がり、通勤形電車を置き換えてゆく。これにより、空港アクセスからラッシュ時まで幅広く対応する展開となったほか、特急を含む阪和線全列車がトイレつきになった。

 空港アクセスの一般列車に共通しているのは、始発から終点まで100km未満が多いこと。渡航客にとって、

「鉄道は機能性重視、航空機は快適性重視」

と割り切っているのではないだろうか。