やっぱり、空港アクセス鉄道は「ロングシート車両」一択であるワケ

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一般列車は空港アクセス鉄道に特化した車両が少なく、既存のロングシート車両で対応していることが多いが、実は“普段の列車”こそが渡航客のウケがよいのだ。

JR北海道は通勤形電車に方針転換

快速「エアポート」は“JR北海道の顔”といえる存在(画像:岸田法眼)
快速「エアポート」は“JR北海道の顔”といえる存在(画像:岸田法眼)

 空港アクセス鉄道にも方針転換を図った例がふたつある。

 ひとつ目はJR北海道で、新千歳空港(1988年7月20日開港)のターミナルビルが1992(平成4)年7月1日にオープンすることから、同日に千歳(ちとせ)線新千歳空港~南千歳間の支線が開業し、快速「エアポート」の運転を開始。15分間隔を基本に、札幌~新千歳空港間を36分で結んだ。

 当初は721系近郊形電車の6両編成を基本に、旭川直通列車は特急形電車(札幌~旭川間は特急)が充当され、快適性を重視。のちに指定席uシートが連結された。

 新千歳空港駅の利用客も年々増加し、快速エアポートはJR北海道のドル箱列車に成長する一方、快適性を重視したことで課題が生じてしまう。大型荷物を抱える渡航客にとっては、使い勝手がよくなかったのだ。

 まず、通路幅が狭いことで大型荷物を置くスペースが少ないこと。721系の場合、デッキ寄りの転換クロスシートがひとり掛けなので、そこに置くか、指定席uシートに乗り、大型荷物置き場に置くしかなかった。また、721系などは乗降用ドアにステップがあることで乗降がしづらい難点もあった。特に特急形電車は5両編成2ドア車(721系は3ドア車)のため、なおさら乗降に手間取ってしまう。

 これからの課題を解決するため、渡航客の機能性向上やラッシュ時の混雑緩和を同時に図る車両として、2014年7月19日に733系3000番台通勤形電車がデビュー。自由席をロングシートにすることで、大型荷物が通路に気兼ねなく置ける環境を創り出す。6号車に車いすスペースが設置され、車いす利用客がいない場合は大型荷物置き場として重宝する。

 また、デッキなし、ステップレス、乗降用ドアの幅を拡大することで乗降時間の短縮を図った。近郊形電車から通勤形電車に格下げというのも珍しい。

 快速エアポートの一部列車に733系3000番台を充てたことで、機能性が大幅に向上。2016年3月26日のダイヤ改正で、遅延や運休の発生を減らすべく、特急形電車の運行および旭川直通をとりやめ、6両編成3ドア車に統一された。

 2023年には、北海道日本ハムファイターズの本拠地が千歳線北広島駅を最寄りとするES CON FIELD HOKKAIDOに移転する。快速エアポートは通勤通学、渡航客に加え、観客輸送も担うことから、ますます重要な存在になりそうだ。

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