なぜトルコはスウェーデン・フィンランドの「NATO加盟」に反対したのか? ドローンと人権を巡る深い理由

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トルコはスウェーデンやフィンランドのNATO加盟申請承認に難色を示した。いったいなぜか。今回、北欧の両国とトルコを巡る複雑な関係を紹介する。

人権と安全保障のはざまで

スウェーデンやフィンランド(画像:(C)Google)
スウェーデンやフィンランド(画像:(C)Google)

 スウェーデンやフィンランドの加盟申請に対して、トルコが難色を示したのは、両国だけでなく、アメリカをも含めた欧米諸国に対して、少しでも有利な条件を突きつけようというトルコ外交の表れとされている。

 2022年6月28日、トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領、スウェーデンのマグダレナ・アンデション首相、フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長がスペインのマドリードで会談し、共同安全保障に関する覚書に署名した。

 これにはトルコからクルド人武装組織の容疑者を求められた際に引き渡しを強化する、トルコに対する武器売却の制限を解除するという内容が盛り込まれているとされている。7月18日にトルコのエルドアン大統領が両国の加盟プロセスの停止を再び示唆しており、トルコの条件闘争はまだ終わっていない。

 今回のスウェーデンとフィンランドによるNATO加盟申請とトルコとの交渉は、両国がこれまで貫いてきた人権重視の外交の転換を示している。両国は自国の安全保障を優先し、これまでの姿勢を転換させた。両国だけでなく、今後は他の国もトルコへの禁輸措置を見直さざるを得なくなるかもしれない。

 差し迫った危機を前にしては、人権よりも自国の安全保障が優先という冷徹な現実を今回のことは示しているのかもしれない。

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