なぜトルコはスウェーデン・フィンランドの「NATO加盟」に反対したのか? ドローンと人権を巡る深い理由
トルコはなぜ申請に難色を示したのか
両国の加盟申請に対して、イギリスやドイツなどの各国は賛成を示す。こうしたなかで、難色を示したのがトルコだった。NATO加盟には現在の加盟国30か国すべてが賛成する必要がある。そのため、トルコが反対すると加盟は実現しない。
トルコが反対したのは、トルコ国内のクルド人問題への両国の対応が原因だった。クルド人はトルコ、イラン、イラク、シリアにわかれて暮らす、国を持たない最大の民族とされている。
クルド人勢力の一部にはクルド人国家を樹立させようとしているものもあり、トルコ政府はその対処に追われている。スウェーデンやフィンランドには難民として受け入れた多くのクルド人がおり、ヨーロッパにおけるクルド人コミュニティーの一翼を担っている。トルコは両国を
「クルド人テロリストをかくまっている」
として非難している。
一方で、スウェーデンやフィンランドもトルコを批判している。2019年トルコ軍がクルド人掃討を目的に行った北東シリアへの越境攻撃に対して、トルコへの武器輸出を停止する制裁に加わった。クルド人への対応でトルコは両国の加盟申請に難色を示したのだ。
紛争地域で戦果を挙げるTB2
2019年のトルコによるシリアへの越境攻撃で活躍したのが、トルコのドローンバイラクタTB2だ。このドローンは、ウクライナでも活躍しているために話題にもなった。
TB2はトルコのバイカルが製造した無人戦闘航空機だ。この機体は、ウクライナでの活躍が話題になっているが、各国の紛争地帯にも投入されている。例えば、2019年11月上旬には、イラク国境を越えて、クルド労働者党(PKK)のメンバーを殺害するために使用されたとされている。先ほど紹介したように2019年の北東シリアへの越境攻撃においても使用されている。
ロシア・ウクライナ戦争以前、TB2は紛争地帯へと投入され、活躍している。しかし、これに対して、TB2が用いている部品を製造する国々は制裁の対象とし、輸出制限をしている。
例えば、2020年10月TB2のエンジンを作っていたオーストリアのロータックス社の親会社であるカナダのボンバルディア社が、レクリエーション用航空機エンジンの軍事転用を確認したとして、輸出を停止した。同じ時期に光電子装置がカナダによって制裁の対象とされ、輸出を制限された。
その後、TB2はトルコ製の部品へと交換して製造を続けている。しかし、TB2の信頼性は紛争地域に投入され続け、戦果を挙げてきたことにある。欧米諸国の懸念をものともせず、TB2は紛争地域で活躍を続けている。